*Books ログ3*



41人目  山崎ナオコーラ


『人のセックスを笑うな』(河出書房新社) ★★★★★★☆☆☆☆


<山崎ナオコーラさん>
2004年、『人のセックスを笑うな』で第41回文藝賞を受賞しデビュー。
この第41回文藝賞は、白岩玄の『野ブタ。をプロデュース』とのW受賞
両作品とも芥川賞候補になるが、どちらも落選。
『野ブタ〜』が話題になり、この作品はあまり目立たなかったものの、
文藝賞の選考ではとても高い評価をされています。
今後の作品に注目が集まる新人作家さんです。


<あらすじ>
『人のセックスを笑うな』 19歳のオレと39歳のユリ。
恋とも愛ともつかぬいとしさが、オレを駆り立てた
美術の専門学校に通うオレは、20歳年上の講師ユリに恋をした。
絵のモデルになってくれと頼まれて、ユリのアトリエに通いだすに
つれ、どんどんと親密になっていく二人。しかし、夫を持つユリとの
情愛の日々にも、ついに終わりが来てしまう――。
せつなさ100%の恋愛小説。第41回文藝賞受賞作。


<感想>
ありきたりで平凡な恋愛
しかも設定が美術の専門学校の生徒(♂)と先生(♀)。
先生の家にヌードのモデルになりに行く生徒・・・
AVみたいやな・・・と思いながら読み始めました。
描かれていることといえば、ごくごく平凡な恋愛のこと。
あたりまえなことしか描かれていない。
なのに、すごく味があるし、面白いし、「小説読んだな」って
気持ちになれる
のは、きっと山崎さんに才能があるからでしょう。
文章力、描写力ともに新人とは思えない。安心して読むことが
できました。特に出だし3ページの出来が最高によかったと
僕は感じました。この小説、最後まで読んでみたいかも・・・
と思わせてくれる出だし。新人作家さんの作品に必ず要求される
部分である「出だし3ページの出来」がよかった点は、かなり評価
できると思います。2作目が出たら是非追っかけてみたいと思える
作家さんでした。

42人目  南木佳士


『ダイヤモンドダスト』(文春文庫) ★★★★★★★★☆☆


<南木佳士さん>
現在、長野県南佐久郡臼田町に住み、佐久総合病院に勤務
地道な創作活動を続けている。1981年、難民医療日本チームに加わり、
タイ・カンボジア国境に赴く。同地で『破水』が第53回文学界新人賞を
受賞したことを知る。1989年、『ダイヤモンドダスト』で第100回芥川賞を
受賞しました。


<あらすじ>
『ダイヤモンドダスト』 火の山を望む高原の病院。
そこで看護士の和夫は、様々な過去を背負う人の死に立ち会ってゆく
病癒えず逝く者と見送る者、双方がほほえみの陰に最期の思いの丈を
交わすとき、時間は結晶し、キラキラと輝きだす・・・
絶賛された芥川賞受賞作。


<感想>
誰にでも好みの小説とかってあるはず。
僕の好みの小説はまさにこういうタイプの小説です。
静かな空気の中で、凛とした佇まいを保つ作品。
多くを語らずして多くを伝える。そんな作品。
早朝の庭でキラキラと輝くダイヤモンドダストのように、人の「死」を美しく
描ききれたのは、この著者が実際に長年の間、医師として働いてきた経験を
持っているからなんでしょう。
この小説はもう何度も読んでいますが、読むたびに堀江敏幸さんの
「雪沼とその周辺」を連想してしまいます。
この小説も「ダイヤモンドダスト」と似た感じの小説で、もろ僕の好みです。
小川洋子さんの作品にも通じるところがあるかもしれませんが、
なすすべのない喪失感」が美しく、みずみずしく描かれている作品を僕は
好むようです。とにかく、この小説は僕の大好きな小説の一つです。


43人目  瀬尾まいこ


『図書館の神様』(マガジンハウス) ★★★★★★★★★☆


<瀬尾まいこさん>
現在、京都府内で中学校の現役国語講師をされています。
その仕事のかたわら、作家としての創作活動にも取り組んでおり、
2001年に『卵の緒』で第7回坊っちゃん文学賞の大賞を受賞し、
デビューしました。2004年、『幸福な食卓』で吉川英治文学新人賞
を受賞。柔らかな文体とやさしさ溢れる物語で、特に女性の読者に
人気があるようです。僕のお気に入りの作家さんでもあります。
今後もっとブレイクしてくれるはずです。


<あらすじ>
『図書館の神様』 自分にも他人にも厳しい主人公清(きよ♀)は、
その厳しさゆえにキャプテンを務めていたバレーポール部の仲間を
自殺させてしまった。その事件のことを引きずりながらも、
地方の大学に進み、その後は高校の講師の道を選ぶ。
バレー部の顧問をやりたかった清に割り当てられたのは、部員数1人
という文芸部
。国語教師でありながら、文学はもちろん漫画すら読む事の
なかった清。彼女は海の見える図書室で、たった一人の文芸部員である
風変わりな少年・垣内君と出会う。文芸部での垣内君との交流を通して、
清の心境にも様々な変化がおとずれてゆく――。
心の再生を優しさ溢れる筆致で描いた、癒しの傑作青春小説


<感想>
ありきたりな言葉になってしまうけど、優しい気持ちになれる作品。
瀬尾さんの作品の登場人物は、けっこう何かを抱えてる人が多くて、
物語の終盤には少しずつ「再生」していくというパターンがある。
マイナスから始まりゼロで終わる感じ。決してプラスまで持っていかない
ところに瀬尾さんのセンスの良さを感じます。
そして、これは僕だけが感じることかもしれないけど、心地良さと同時に
物足りなさも感じてしまう。この「物足りなさ」がすごく好きです。
この物足りなさは、人物描写や心理描写の少なさからくるものだと
僕は感じてます。感情の揺れ動きなどを執拗に表現せず、雰囲気や空気感で
何かを伝えようとする
、そういう作家さんなんでしょう。
僕はこういった、読者に想像する余地を与えてくれる作品をすごく好むし、
全体的にゆる〜い作品が好きなので、瀬尾さんの作品はかなりツボです。
そして、何よりも会話文のセンスが最高にイイです。軽妙な感じもしつつ、
でもあえてストライクを外してくるあたり、なかなかやるなって感じです。
ノスタルジー全開で、のめり込むように読ませてくれます。
かなりオススメの作品です。


<そのほかの作品>
『卵の緒』(マガジンハウス)★★★★★★★★☆☆
『幸福な食卓』(講談社)  ★★★★★★☆☆☆☆
『優しい音楽』(双葉社)  ★★★★★★★★☆☆


44人目  高野和明


<高野和明さん>
高校在学中に書いた脚本「幽霊」が、城戸賞の最終選考に残る。
1984年に岡本喜八監督に弟子入り。映画・TV・Vシネマのメイキング演出や
スチルカメラマンなどを担当。1989年には渡米し、ABCネットワークの番組に
スタッフとして参加。ロサンゼルス・シティ・カレッジで映画演出・撮影・編集を学ぶ
1991年帰国後、脚本家となる。2002年に「13階段」で江戸川乱歩賞を受賞し
作家デビューしました。


<あらすじ>
『13階段』 犯行時刻の記憶を失った死刑囚
その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。
だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。 処刑までに残された時間は
わずかしかない。 2人は、無実の男の命を救うことができるのか――。
江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。


<感想>
これがほんとにデビュー作なのか!?
と思っちゃうほど凄い衝撃を受けた記憶があります。
社会派ミステリではあるけれど、本格ミステリの要素も盛り込まれており、
とにかく読み応え抜群です。
特に刑務官や死刑囚の心理描写、情景描写は圧巻!!
死刑囚たちの「お迎え」の描写や死刑執行の描写は、読んでいて吐き気がする
ほどの臨場感
でした。
この喚起力ある描写の土台には、多くの文献や聞き取り調査による
「地道な勉強」があったんだろうなぁ・・・と思わされました。
そして、この小説を読んで考えさせられたことが「死刑制度」について。
僕はこの本を読むまで、なんとなく死刑制度には「賛成」側だったんですが、
もう少しちゃんと考えないとなぁ・・・と思ってしまいました。
死刑を執行するのは「人(刑務官)」の手による、という当たり前のことを、
少し軽く考えていました。
人を殺した人を人が殺すというのは、矛盾するような気がするし、
死刑執行だって殺人になるのでは?と考えてしまうと「う〜ん・・・」という感じに
なってしまいます。
死刑執行を人の手でしないといけないから、死刑制度を廃止にすべきだというのも
明らかにおかしいのですが、冤罪の可能性も考慮に入れると、やはり死刑制度が
理にかなったものとは思えなくなってしまいます。
応報刑論と教育刑論という二つの背景を基に、死刑制度について問題提起をした
高野さんに僕は感謝したいです。
僕の考えはまだまとまってはいませんが、死刑制度についてはもう少し勉強して、
そのうち「Think」に自分の考えを書いてみたいな、と思っています。


45人目  伊坂幸太郎


『魔王』(講談社) ★★★★★★★★☆☆


<伊坂幸太郎さん>
ミステリ作家でありながら、既存の枠にはまりきらない独特な作風で、多くのファンを
魅了し続けています。緻密な構成とストーリー展開の意外性、洒脱なユーモア・・・
近年稀に見る資質の持ち主として、今もっとも注目されている作家さんです。
『重力ピエロ』 『チルドレン』 『グラスホッパー』 と3度も直木賞候補になっています。
『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を受賞、さらには3年連続
本屋大賞ノミネートなど、彼に対する注目度の高さはかなりのものです。


<あらすじ>
『魔王』  考えろ考えろマクガイバー・・・
考えることを常とする兄と、考えないことを常とする直感の鋭い弟。
二人はそれぞれ、自分の持つ不思議な力の存在を知る
ちょうどその時、世間では若き政治家が日本に大きな選択を迫ろうと
していた。人々の心を鷲づかみにする政治家と扇動される大衆。
未来にあるのは青空なのか、荒野なのか――。
二人の兄弟は、それぞれの方法で世の中の流れに立ち向かう。
兄の物語「魔王」と弟の物語「呼吸」の二編を収録。


<感想>
「群集心理」の危険性をモチーフに、この小説を極上のエンターテイメント作品に
仕上げてしまった伊坂幸太郎さんに拍手。久々に小説を読んでいて楽しいなって
思いました。憲法9条や国民投票についての議論を、小説の一部として使ったところも
示唆に富んでいて良いと感じたし、ファシズムと宮沢賢治をだぶらせるところなんて
「ほぉ、そうきたかぁ・・・」と唸らされました。
着想のユニークさは相変わらず健在。それに加えて、小説のバランスの良さや
決して着地点を見誤らない点もさすが
。この作品で、伊坂幸太郎さんの新たな一面を
垣間見ることができました。
そして、この小説を読んでこう思った。
僕も、恐怖とかまわりの雰囲気には負けたくはないな、って。
すごい規模の洪水が起きたとしても、自分だけは水に流されないで立ち尽くす
一本の木になりたいな、って。そして、常に、自分自身の思考をあやつっている
「何ものか」の存在に敏感でいたい
。「何ものか」に騙されている自分について
知ることは重要だと思うから。


<そのほかの作品>
『死神の精度』(文藝春秋)              ★★★★★★☆☆☆☆
『陽気なギャングが地球を回す』(祥伝社文庫) ★★★★★★★★☆☆


46人目  東野圭吾


『容疑者Xの献身』(文藝春秋) ★★★★★★★☆☆☆


<東野圭吾さん>
言わずと知れた超人気作家さん。今もっとも売れてる作家さんだと思います。
ドラマ化、映画化されている作品もたくさんあり、本を読まない人でも知っている人は
多いはずです。最近では、「白夜行」がドラマ化されています。
1985年、『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、デビュー。
1999年には、『秘密』で第52回日本推理作家協会賞を受賞。
2006年には、『容疑者Xの献身』でようやく直木賞を受賞しました。
ミステリの書き手として有名ですが、読み手を選ばない幅広い作風で有名なので、
東野作品は読書初心者にも自信を持ってオススメできます。


<あらすじ>
『容疑者Xの献身』  元ホステスの靖子は、夫と別れ、今は娘との二人暮し。
その平和な生活をぶち壊すかのごとく、突如目の前に現われた元・夫の富樫。
靖子の部屋で金を無心しようとする富樫に対し、靖子とその娘は、はずみで彼を
殺してしまう。
靖子の隣の部屋に住んでおり、ひそかに靖子に心を寄せていた数学教師の石神は、
彼女たちの犯行に気付き、靖子のために殺害を隠蔽しようとするが・・・
物理学者・湯川をして「天才」と言わしめる石神は、犯行を隠し通せるのか。
物理学者・湯川シリーズ、初の長編。


<感想>
男がどこまで深く女を愛せるのか。どれほど大きな犠牲を払えるのか――
容疑者石神の献身に素直に感動したのは僕だけでしょうか?
「予知夢」「探偵ガリレオ」に続く、物理学者・湯川シリーズの第3弾ですが、
バリバリの理系トリックも「オカルト VS 物理学」という構図もまったく
出てきません。トリック等のミステリ的な要素はむしろ薄く、オーソドックスな
作りになっています

ありがちと言えばありがちなトリック&予想通りと言えば予想通りの結末。
なのに、読み応え十分でした。
読みやすい文で、丁寧に事件の細部を説明し、登場人物の心理描写も
詳細に描かれているため、のめり込むように読めてしまうと思います。
連載前から直木賞を意識していたのかどうかはわかりませんが、
ミステリファンだけでなく、一般読者受けするような作品に仕上がっていました
湯川と石神の過去の回想シーンがあるおかげで、「天才物理学者・湯川 VS
天才数学者・石神
」という構図がくっきりと浮かび上がり、そこに二人の「友情」
なんかも入り込んで、なかなか味のある作品になっています。
理系人間をこよなく尊敬している僕にとって、石神というキャラクターはかなり
刺激的で印象に残る登場人物でした。


<そのほかの作品>
『放課後』(講談社文庫)         ★★★★★★☆☆☆☆
『仮面山荘殺人事件』(講談社文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『悪意』(講談社文庫)          ★★★★★☆☆☆☆☆
『秘密』(文春文庫)            ★★★★★★★☆☆☆
『予知夢』(文春文庫)          ★★★★★★☆☆☆☆


47人目  西加奈子


『さくら』(小学館) ★★★★☆☆☆☆☆☆


<西加奈子さん>
イラン・テヘラン市生まれの大阪育ち。関西大学法学部卒業。
『あおい』で作家デビューを果たし、2作目の『さくら』では20万部を超える
大ベストセラー
となりました。また、この作品は本屋大賞2006にも
ノミネートされており、書店員からの評価も高いことがわかります。
3作目の『きいろいゾウ』が小学館から今日発売されました。
注目の集まる若手新人作家さんです。


<あらすじ>
『さくら』 幼い頃からモテまくりだった兄の一(はじめ)。
同じく、幼い頃からモテまくり&乱暴者で有名だった妹のミキ。
いつも家族を明るくしてくれて包容力のある母。口数は少ないけど、いなきゃ困る父。
そして、次男の主人公。そんな明るく楽しい家族に襲いかかった事件。
それは兄の自殺だった・・・
少しずつ狂いはじめた家族の歯車。母は酒浸りになり、父は家を出た。
そんな家族の中でも、犬の「さくら」は常に健気に尻尾を振り続ける。
5人の家族と1匹の犬の心あたたまるストーリー


<感想>
まっすぐで、まっすぐで、まっすぐな小説。まさにそんな感じでした。
著者である西さんも、きっとまっすぐな方なんだろうな・・・とすぐに想像できます。
キレイなものをキレイだと感じ取ることができる感性を持っているんだと思います。
特に68ページ〜78ページの「おじいさん」という箇所は、まったく素晴らしい
出来だと個人的には思いました。このエピソードをさらに練り上げて、幅を広げて
いけば、それだけで一つの素晴らしい短編小説になり得るとさえ思ったほど。
特に子どもの描き方が抜群に上手いなと感じました。
この作家さんには、ぜひとも児童文学を書いてもらいたいです。
ただ、優等生の小説(綺麗すぎる小説)やなぁ・・・と感じたのも事実。
何もかもを説明しすぎてしまうところも、少しげんなりしてしまったり・・・
多くを語りすぎてしまうと、小説の風味というか匂いというか、そういった
自然に作品から出てくる良さが減ってしまうと僕は思います。
『世界の中心で愛を叫ぶ』→『いま、会いにゆきます』→『さくら』って感じで
ベストセラーを出している小学館ですが、この作品で「小学館=バリバリ商業主義」
ってイメージが、自分の中でさらに強調されました。売り方はたしかに上手いかも
しれないけど、それってどうなの? と少し思ってしまいます。
そういえば『県庁の星』も小学館だったような気が・・・


48人目  古川日出男


『LOVE』(祥伝社) ★★★★★★★★★★


<古川日出男さん>
早稲田大学第一文学部中退後、編集プロダクション入社。
1991年より舞台演出家として活動する。1998年『13』で小説家としてデビュー。
『アラビアの夜の種族』で第55回日本推理作家協会賞、第23回日本SF大賞をW受賞。
『ベルカ、吠えないのか?』で第133回直木賞の最終候補になる。また、この作品は
本屋大賞2006にもノミネートされました。
2006年、『LOVE』で第19回三島由紀夫賞を受賞。
ジャンル分け不能な作品世界と、日本人離れした濃密な文体
言葉にできない何かを表現しようとする貪欲さと、独自の世界観。
この人は何かを変えてくれるかもしれない!と思わず期待してしまいます。
今、世間からもっとも注目されている作家さんです。


<あらすじ>
『LOVE』 都心の川を観察するOL、ギターを弾く青年、自転車と語り合う少年、
放浪の料理人、ネコを数える少年――。品川、白金、目黒、五反田を舞台に、
東京の「今」を生きる人々を、ノラ猫の視点で描いた群像劇
『ベルカ、吠えないのか?』に対する猫的アンサー。第19回三島賞受賞作。


<感想>
ここ数年のうちに読んだ本の中で、一番おもしろかった小説がこの作品。
久々に本を読む楽しさを思い出させてもらいました。
とにかくテンポ・リズムの良い文章がぐいぐいと物語を引っ張って行ってくれる。
舞城王太郎の文体が、でたらめなフォームから繰り出される剛速球なら、古川日出男のそれは
同じフォームから繰り出されるけど、常に球筋の違う魔球。本当に恐れ入った。
活字に目玉をつかまれてるような、そんな感覚に陥るほど、のめり込むように読みました。
古川さんの文体(作品)は、すごく音楽に近いところにその座標があるような気がします。
目で見たこと、頭で考えたことを、何のフィルターも通さずに文章にしている。とにかく斬新で新しい。
この作家の想像力にはいつも本当に驚かされます。

そして、小説を書くことで何かに挑戦しようとしている、この人の姿勢に素直に敬意を示したい。
今後、金原ひとみがどんな新作を出そうと、日本の近代文学はもう「終わり」をむかえている
(と僕は思っている)。そんな中で古川日出男が、日本文学を新しい境地に連れて行ってくれると
僕は確信しています。
この『LOVE』という作品。視点が急に近づいたり、遠のいたり、登場人物がころころと変わって
いったり、語りかけるような文章で物語の展開を一気にテンポアップさせたり、かと思えば急に
テンポダウンさせたり。古川日出男は、東京近郊をスケッチする感じでこの作品を描いたようだが、
古川さんの目にはこんな風に東京が映っているのか・・・と深く感激しました。
本当に研ぎ澄まされた感性(視点)を持っておられます。

村上春樹が『アフターダーク』で挑戦しようとしたことを、古川さんはこの作品でいとも簡単に
成功させて見せた。ようやく日本の文学が少しずつ動き出そうとしているのかもしれません。
「私」の内面をえぐりだす純文学だって僕は大好きだけど、そんな「私」や「自我」や「内面」なんて
すべて徹底的にぶっ壊して、新しい小説を構築してほしい。新しい景色を見せてほしい。
古川日出男には「外」を意識して小説を書き続けてもらいたい。とことん疾走してもらいたい。
僕はそんな風に思っています。


<そのほかの作品>
『ルート350』(講談社)             ★★★★★★★★★☆
『gift』(集英社)                  ★★★★★★★☆☆☆
『二〇〇二年のスロウ・ボート』(文春文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『ベルカ、吠えないのか?』(文藝春秋)   ★★★★★★★☆☆☆
『ハル、ハル、ハル』(河出書房新社)     ★★★★★★☆☆☆☆
『ゴッドスター』(新潮社)             ★★★★★★★☆☆☆


49人目  重松清


『流星ワゴン』(講談社文庫) ★★★★★★★★★☆


<重松清さん>
出版社勤務を経て、執筆活動に入る。
1999年に『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回
山本周五郎賞、2001年に『ビタミンF』で第124回直木賞を受賞。
話題作を次々と発表するかたわら、ライターとしても、ルポルタージュや
インタビューなどを手がける。
社会問題や家族の問題を等身大の登場人物の視点から描き、現代社会の
影の部分を見事に浮き彫りにする
、そんな作品を多く描いておられます。


<あらすじ>
『流星ワゴン』 
死んじゃってもいいかなぁ、もう・・・。ドン底に突き落とされた38歳、秋。
ある夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。
そして――自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、
人生の岐路となった場所への旅
。果たして、過去をやり直すことはできるのか・・・
「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。号泣必至です。


<感想>
2年ほど前にこの本を読んで、感動のあまり、誰彼かまわずこの本を
薦めまくっていた記憶があります。読み終わって2、3日経っても、ずっと
この小説のことを考えていたほど、のめり込むように読み、心底疲れて
しまうほどに泣きました

時空を越えるワゴンに乗って過去をやり直すという、ファンタジー的
要素を持っているのに、リストラや不倫や受験戦争など、現代社会の
普遍的題材を扱っているためか、ものすごくリアリティがあり、そこが
この作品が「成功」した理由だと感じます。
現実は残酷すぎるほど残酷。そんな中で、誰もが悩みながら、もがきながら
生きている
。そんな僕たちに、そっと救いの手を出してくれる。重松さんは
そんな語り手なのだと僕は思います。僕たちの眼前に一筋の光を当てるわけでは
決してない。暗い中で、もう一度、自分の力で頑張ってみろ。重松さんは
そうやって僕たちを励ましてくれるんです。
読むものに生きる勇気を与え、少し元気な気持ちにさせてくれる、そんな
作家さんです。僕の書評なんかで満足せず、ぜひ手にとって読んでもらいたい
作品です。


<そのほかの作品>
『エイジ』(新潮文庫)      ★★★★★★☆☆☆☆
『口笛吹いて』(文春文庫)   ★★★★★☆☆☆☆☆
『その日の前に』(文藝春秋) ★★★★★★★★★☆


50人目  藤野千夜


『少年と少女のポルカ』(講談社文庫) ★★★★★★★★★☆


<藤野千夜さん>
MTFトランスジェンダーの作家さん。もともとは漫画雑誌の編集者
だったものの、男性として入社しながら女性の格好で出勤するように
なったため、10年勤めた会社をクビになり、小説家をめざすことに。
1995年に「午後の時間割」で第14回海燕新人文学賞、1998年に
「おしゃべり怪談」で第20回野間文芸新人賞、2000年に「夏の約束」で
第122回芥川賞を受賞している。


<あらすじ>
『少年と少女のポルカ』 
男子校に通うトシヒコは、陸上部のリョウに恋をしている。
同級生のヤマダは、「間違った身体に生まれたから」と女性ホルモンを
注射する。幼なじみのミカコは、突然怖くて電車に乗れなくなった。
心と身体の違和感にふるえる三人の青春を軽妙に描いた傑作


<感想>
男なのに男が好きなのも、男の身体に生まれてきてしまったのも、
そのことが周囲から理解されないのも、全部仕方がないことだと主人公たちは
理解している。誰が悪いわけでもなく、その事実を受け止めて、ひたすら前向きに
生きている
。そんな彼らにすごく爽快感みたいなものを感じてしまう。
これは僕が常々思っていることだけど、「社会的弱者=小説内弱者」という
設定にしてしまうと、小説が小説ではなくなってしまう。マイノリティを深刻に
描いても、軽薄に描いても、その時点で小説は破綻してしまう

また、同性愛者などを小説のアクセントとして使う作家もいるけれど、
それはそれで「少し変わった面白い人」を登場させなければ自分の小説に
深みが出ないということだから、単に自分の実力のなさを物語っているだけ。
そういった作品と比べて、藤野さんの作品に出てくるセクシュアルマイノリティの
登場人物たちは、まさにありのまま、等身大といった感じがする。
藤野作品を読んでみるとわかるけど、ほとんど大きな出来事が起こるわけでもなく、
ただ普通に時間がすぎていく。だから、少し物足りないと感じることもあるけれど、
これらの作品の土壌には、どこか哀しさに似た、でも哀しさとは少し違う匂い
しみ込んでいて、読んでいると時おり、そういった匂いや風味が立ち込めてくる。
この「微妙さ」は書こうと思ってもなかなか書けるものではなく、まさに藤野さんの
才能だと思う。みなさんもこの「微妙さ」を楽しんでみてください。


<そのほかの作品>
『夏の約束』(講談社文庫) ★★★★★☆☆☆☆☆


51人目  中山可穂


『猫背の王子』(集英社文庫) ★★★★★★☆☆☆☆


<中山可穂さん>
演劇の世界から創作の世界へと転身された人です。
1993年に『猫背の王子』でデビューするも、なぜか2年後に新人賞に応募。
1995年、『天使の骨』が第6回朝日新人文学賞を受賞。この賞からの生き残りは
少なく、名もない賞ではあるが、2001年に『白い薔薇の淵まで』で第14回
山本周五郎賞を受賞し、周囲から注目を集めはじめる。
主な作品に『サグラダ・ファミリア』や『感情教育』などがある。


<あらすじ>
『猫背の王子』 自分とセックスしている夢を見て、目が覚めた――
女から女へと渡り歩く淫蕩なレズビアンにして、芝居に全生命を賭ける
演出家・王寺ミチル。彼女が主宰する小劇団は熱狂的なファンに支えられていた。
だが、信頼していた仲間の裏切りが、ミチルからすべてを奪っていく。
そして、最後の幕が上がった・・・
スキャンダラスで切ない、青春恋愛小説の傑作


<感想>
とにかく感情の起伏が激しい。言うことは矛盾していて、いつも偉そう。
そして、誰彼かまわず周りの女に手を出しまくる女たらし。淫乱なレズビアン。
なのに、この王寺ミチルという主人公に、僕は終始夢中でした。
演劇が私のすべてだ」と言い切るぐらい、全生命を芝居に注ぎ込んでいる
ミチルの姿に圧倒され、引き込まれてしまったからだろう。
「これが私のすべてだ」って言える人は案外少ないように感じる。
何を犠牲にしてでもこれだけは貫きたいという、強いエネルギーを持ってる人は
そうそういない。たいていの人は、何かを得たいと思うと同時に、
何かを失いたくないと思う
はず。バランスを保とうとするはず。
僕はそれが間違った姿勢だとはまったく思わないけれど、ミチルのように
これだけが自分のすべてだ、これだけが私の欲しいものだ、と言い切れる、
ギラギラした野心のようなものを持ってる人を見ると、ものすごく心を
揺さぶられるし、どこか共感できる。だから、この小説を読んでいて、とても
楽しかった。レズビアンの人だけではなく、どんな人でも楽しめる小説だと
思います。


52人目  中島らも


『今夜、すべてのバーで』(講談社文庫) ★★★★★★★★☆☆


<中島らもさん>
灘中→灘高→大阪芸大。卒業後、コピーライターや広告プランナーの職を経て、
1987年から作家活動を本格化。戯曲、エッセイ、小説、落語、バラエティ番組の
脚本など、幅広い分野で活躍

1992年、『今夜、すべてのバーで』で、第13回吉川英治文学新人賞を受賞。
1994年、『ガダラの豚』で第47回日本推理作家協会賞長編賞を受賞。
作家活動を行うかたわら、劇団「笑殺軍団リリパットアーミー」を結成。
また、1996年夏にロックバンド「PISS」を結成し、ボーカルとギターを担当。
音楽のジャンルでもその才能を発揮していた。
以前から大麻解放を主張していたが、2003年2月に大麻取締法違反などで逮捕
自らの獄中体験記をつづったエッセイ『牢屋でやせるダイエット』を出版。
手錠姿でサイン会を開くなど精力的に活動を再開したが、死の直前は酒量が増え、
常に酩酊状態だったとか。
2004年7月15日深夜、飲食店を出る際に階段から転落して亡くなる。
小説『酒気帯び車椅子』『ロカ』と対談集『なれずもの』が遺作として死後刊行された。


<あらすじ>
『今夜、すべてのバーで』 アルコールにとりつかれた男・小島容の物語。
連続飲酒の果てに入院生活を余儀なくされた彼と、それを取り巻く個性的な
人々を描いた傑作長編。人間は誰もが、何かに依存せずには生きてゆけない
そんなことがシリアスに、そして笑いも交えて面白く描かれています。
第13回吉川英治文学新人賞受賞作。


<感想>
何度も読み返してしまうぐらい大好きな小説です。
高校生の頃、この小説を初めて読んだ時、ものすごく衝撃を受けたのを
よく覚えています。あの小汚いオッサンがほんとにこれを書いたのか! って。
とにかく人物造形が抜群にうまいです。親友だった天童寺、同じ病室の
綾瀬少年や西浦爺、そして赤河医師。特に、病院の屋上での西浦爺との
会話の場面や、霊安室での赤河医師との乱闘の場面は、何回読んでも
のめり込むように読んでしまいます。
中島らもは最強のエンターテイナーだと僕は思ってます。
それは、シリアスな場面をシリアスに書き過ぎないから。
きっと小説で泣かせるのはそれほど難しくはない。シリアスな場面で読者を
笑わせて、胸がキュッとしめつけられる様な、ほろ苦いあと味を残すのが
一番難しいと思う。中島らもはそういう作品を書ける、才能に満ち
溢れたお方です。
小説の中での細かい資料の引用や、しっかりとした独自の理屈で
読者をぐいぐい引っ張っていくところもさすが
。バロウズの引用や、
ドラッグの国家専売制についてなど、考えさせられることも多い。
読んでてハッとさせられる箇所があるかどうか、というのはイイ小説か
どうかの判断基準でもある。この小説はまさにイイ小説です。


<そのほかの作品>
『お父さんのバックドロップ』(集英社文庫) ★★★★☆☆☆☆☆☆
『人体模型の夜』(集英社文庫)        ★★★★★★☆☆☆☆
『寝ずの番』(講談社文庫)           ★★★★★★☆☆☆☆


53人目  保坂和志


『プレーンソング』(中公文庫) ★★★★★★★★☆☆


<保坂和志さん>
1990年、『プレーンソング』でデビュー。
1993年、『草の上の朝食』で野間文芸新人賞、
1995年、『この人の閾(いき)』で芥川賞、
1997年、『季節の記憶』で谷崎潤一郎賞と平林たい子賞を受賞。
小説だけではなく、エッセイや文芸評論、哲学についての著書など、
幅広く活躍している、ネコ好きの作家さんです。


<あらすじ>
『プレーンソング』 猫と競馬と、4人の若者のゆっくりと過ぎる
奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の海へ行く日までの
とりとめのない、何も起こらない日常を描いた、保坂和志のデビュー作。


<感想>
何も起こらない小説、とりとめのない小説を描かせたら、保坂和志が
まちがいなく日本一でしょう。小説のテーマなんてものは存在せず、
話の流れも見えてこない。まったくどこに向かってるのかわからない。
そんな小説です。内田百閧フ『阿房列車』のような、電車の窓から
外の景色を眺める「楽しさ」が保坂作品にはあります。

小説を読む人は、話の「スジ」を楽しんでいる人が多いけれど、僕は
「スジ」のない小説こそ評価すべきだと考えています。だって「スジ」の
ある小説は腐るほどあるから。そして、文字通り腐りきっている「スジ命」の
小説がやたらと多い昨今、保坂作品はものすごく光輝いて僕には見えます。

保坂作品は、8ミリビデオで撮ったような映像的作品のようだと、
僕は感じています。一文をやたらと長くひっぱる独特の語り口を、
意識的?に使うことで、のんべんだらりとした、気だるい雰囲気を
見事に作り上げています。

保坂和志の作品が村上春樹の初期作品に似てると言う人がたまにいますが、
僕はむしろ対照的だと感じています。村上春樹は、「翻訳調のクールな文体」と
「意外性のある洒落たレトリック」でセンチメンタルな感情を引き出し、
読者のツボを刺激する。この村上的ツボを徹底的に外したのが保坂和志だと
言えるでしょう。

この小説の終盤に出てくるゴンタという登場人物が語っているように、
「いまここにある」ということが保坂小説の全てなんだと思う。
最初に小説のテーマが存在しないと書いたけれど、この小説が存在している
こと自体がテーマ
なんだと僕は感じます。作品の存在自体が一種のテーマ(哲学)
なんだと感じられる小説ってなかなかお目にかかれません。

そして、なんといってもこの小説のラストが素晴らしい。
「えっ、こんな終わり方なの!?」と誰もが感じる終わり方です。
一般的には不完全燃焼と言われる「オチ」のない終わり方なのだけれど、
それは意図的にそうしているだけで、そういった終わらせ方をする
保坂和志の「美意識」が僕はものすごく好きです。先が続きそうなところで、
ぶつっと話を終わらせてしまうラストはかなり斬新で、おそらく他にこんな
書き手はいません。

好きな作家の話題になったとき、僕が保坂和志の名前を出しても、
「あぁ、保坂和志ね」ってリアクションをくれる人があまりいなくて、
それだけがすごく残念です。


<そのほかの作品>
『季節の記憶』(中公文庫)   ★★★★★★★☆☆☆
『草の上の朝食』(中公文庫) ★★★★★★☆☆☆☆


54人目  いしいしんじ


『ぶらんこ乗り』(新潮文庫) ★★★★★★★☆☆☆


<いしいしんじさん>
2000年に初の長編小説『ぶらんこ乗り』を発表。
たいへんな物語作家が現われたと大きな話題になる。
その翌年には『トリツカレ男』を上梓。
2003年、『麦ふみクーツェ』で坪田譲治文学賞を受賞。
2004年、『プラネタリウムのふたご』が三島由紀夫賞の
候補作になるも落選。(矢作俊彦の『ららら科學の子』が受賞)
それ以降も意欲的に創作活動を続け、『ポーの話』や『雪屋のロッスさん』
などの売れ行きも良好。小学生から大人まで、幅広い年齢層から支持されている、
日本一の物語作家さんです。


<あらすじ>
『ぶらんこ乗り』 ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。
声を失い、でも動物と話ができる、つくり話の天才。もういない、わたしの弟。
天使みたいだった少年が、この世につかまろうと必死にのばしていた小さな手。
残された古いノートには、痛いほどの真実が記されていた。
物語作家いしいしんじの誕生を告げる奇跡的に愛おしい第一長編。


<感想>
子どもだけではなく、大人にも読んでもらいたい物語です。
「感動」というほど劇的ではないけれど、静かに泣けてくる。そんな小説です。
途中、随所で挿入される弟の作ったお話が物語全体の良いアクセントになってますが、
僕は個人的に「うたうゆうびんはいたつ」(P82〜)がお気に入りです。
いしいしんじの作品を読んでいて、いつも思うことだけど、決定的に何かが
書かれていない感じ
がします。たとえば、この作品では「決定的な哀しさ」が
書かれてません。辛い出来事や事件なんかも出てくるわけですが、それが
「決定的な哀しさ」にまで到達していない。「物哀しい」程度で終わっている。
そういったところがこの作品の魅力であり、最後まで飽きずに読みたくなる
所以なのでしょう。
ぶらんこ乗りは、ほとんどの時間は一人ぼっちで「孤独」なわけだけど、ほんの
一瞬だけ相手と「つながる」ことができる。この一瞬の大切さを、命がけで得ることの
重要性。得たいと思うことの重要性。こういったものがうまく描かれてるように
僕は感じます。
そして、ぶらんこが行き来する「生の世界」と「死の世界」について。
「生きること」と「死ぬこと」について、しっかり考えさせてくれる物語でも
あると思います。主人公と弟に対する、おばあちゃんのセリフが印象的だったので、
ここで一部を紹介します↓


「もう一度だけいうよ、父さんと母さんが死んだんだ。飛行機の事故だ。
きこえないふりをするんじゃない。ひとはいつか死ぬんだ。そのいつかが
実際いつなのかなんて、当人にだって知れない。まわりはみんな驚かされる。
お前たちだけが特別じゃないよ、親しいひとはいつだって突然死ぬものなんだ」

「けっして思い出にすがるんじゃないよ。そのかわりね、できるだけ死を考えなさい。
わからなくていいよ、わかるもんじゃないし。けれど、目をそらすのだけはやめなさい。
自分の父さんと母さんが、死んだ。お前たちふたりそれぞれが、受け止めなくっちゃ
ならないんだ。それだけは、ちゃんとやりとおしなさい」



なかなか良いセリフだなと思います。
この物語の登場人物の中では、このおばあちゃんが一番魅力的だったように
僕は感じました。


<そのほかの作品>
『トリツカレ男』(新潮文庫)       ★★★★★★☆☆☆☆
『麦ふみクーツェ』(新潮文庫)     ★★★★★★☆☆☆☆
『プラネタリウムのふたご』(講談社) ★★★★★★★☆☆☆


55人目 舞城王太郎


『熊の場所』(講談社文庫) ★★★★★☆☆☆☆☆


<舞城王太郎さん>
学歴、職歴ともに非公表の覆面作家。
2001年、『煙か土か食い物』で第19回メフィスト賞を受賞しデビュー。
同じメフィスト系の西尾維新らとともに「新青春エンタ」と呼ばれる
新ジャンルを確立。10代・20代の読者から圧倒的な支持を集める
三島賞候補となった『熊の場所』や、芥川賞候補となった
『好き好き大好き超愛してる。』など、ミステリ外でも大活躍。
芥川賞選考会では、石原慎太郎に大批判されるも、池澤夏樹や
山田詠美からは高く評価され、文壇での評価は二分している。
2003年、『阿修羅ガール』で第16回三島賞を受賞。
小説だけではなく、イラストレーターや映像作品の世界でも才能を
発揮している、新世代の作家さん
です。



<あらすじ>
『熊の場所』
同級生「まー君」の猫殺しに気づいた少年は、あまりの怖さに恐れおののき、
学校から逃げるようにして家へ逃げ帰る。しかし、そこで少年は父の話を思い出す。
学生時代に山で遭遇した熊の話。「恐怖を消し去るには、その源の場所に、
すぐに戻らなければならない
」という教訓。少年は、猫殺しの恐怖を消し去るために
まー君との接触を試みてゆくが・・・
表題作「熊の場所」の他に、倉持裕によって戯曲化された「バット男」、
日本推理作家協会賞の候補作となった「ピコーン!」を収録。


<感想>
文体だけの作家というイメージがあったけど、実際に読んでみるとそうでもなかった。
句読点の少ないスピーディーな文体と、圧倒的な文圧はたしかにそれだけで一つの魅力。
「語りの舞城」なんて言う人も僕の周りにけっこういるけど、「語り」だけでいえば
町田康の方が断然上だと僕は思います。
テーマが稚拙な上に、さりげなさのない、底の浅さや物足りなさを感じる小説でした。
でも、この作家の想像力、想像の飛躍力には、本当に驚きました。自分の感性、五感だけを
頼りに書ききった感じの小説です。また、ところどころで印象深いフレーズがあり、
この作家の思考の深さにも感心しきりでした。
人が思いつきそうで思いつかないことをやってる感じがするし、本当に感覚だけで
書いてる小説
(小説と分類できるのかも謎?)なので、すごく書評をするのが
難しいけど、とにかく才能に溢れてる作家さんだなぁ、と終始感じさせられました。
ただ、この人の作品を読んでいると、なんとも説明のしがたいアンバランスさや
不気味さ
を感じてしまう。これは僕だけなのかもしれないけど。
この作家さんは、ひょっとすると文章での表現よりも、他の表現方法での
創作活動の方が合うのかもな、とも思ったり。小説という表現ツールが合わないのかな?
なんて感じるところも少しあったりしました。
舞城作品はまだ全部は読んでないけど、今のところ「煙か土か食い物」が僕の中ではベスト。
本短編集の中では「バット男」がお気に入りです。


<そのほかの作品>
『煙か土か食い物』(講談社文庫)      ★★★★★★☆☆☆☆
『好き好き大好き超愛してる。』(講談社) ★★★★★★☆☆☆☆
『阿修羅ガール』(新潮文庫)         ★★★★☆☆☆☆☆☆


56人目  堀江敏幸


『雪沼とその周辺』(新潮社) ★★★★★★★★★★


<堀江敏幸さん>
明治大学理工学部の教授であり、フランス文学者でもある作家さん。
1999年には『おぱらばん』で三島由紀夫賞、2001年には『熊の敷石』で芥川賞を受賞。
2003年、『雪沼とその周辺』に収録されている「スタンス・ドット」で川端康成文学賞、
『雪沼とその周辺』が谷崎潤一郎賞を受賞。2006年、『河岸忘日抄』で読売文学賞を受賞。
小説の執筆以外にも、エッセイの執筆や翻訳の仕事もされています。
正統派(まがい物ではない本物)の純文学を書く作家さんです。


<あらすじ>
『雪沼とその周辺』 山あいの静かな町・雪沼で、ボウリング場、フランス料理屋、
レコード店などを営む人々の日常や、その人生の語られずにきた甘苦を
綿密な筆づかいで描く連作短編集。川端康成文学賞受賞作「スタンス・ドット」ほか
6編を収録。


<感想>
廃業前夜のボウリング場で、最後の一投にのぞむ店主を描いた「スタンス・ドット」が特にいい。
ボウリングのレーンの手前に並ぶ、立ち位置を示すための小さな矢印「スタンス・ドット」
どんなピンの残り方をしても、決して自分のスタンス・ドットを変えようとしなかったハイオクさん。
彼がいつも奏でていたピンをはじく独特な音。この音をついに自分で奏でることができぬまま、
廃業の日をむかえてしまう店主が、自分の立ち位置を振り返るこの作品。
本当にパーフェクトな短編小説だと僕は感じました。

最初の一文字から、最後の「。」(句点)まで、いっさいのムダがない、完璧な小説です。
特に一番最後のセンテンスなんて、何度も反芻して読みたくなるほどに艶っぽい文章。
堀江さんの文章は本当に味わい深くて、急いで読むのがもったいないほどです。
特に、句点をはさみながらの息の長い文章は本当に魅力的で、同じ息の長い文章でも、
保坂和志さんの文章とは少し違い、どっしりとした安定感があって、緊迫感すら漂わせる筆致です。

堀江さんの作品は、小説からうまくストーリー性を取り去っているように感じます。
そして、ストーリー性を取り去ってそこに残るものは、限りなく「詩的」なものです。
こういった詩的な美しさが、独特な風味や、凛とした空気を作り上げ、物語に静かな余韻を残す。

この作品もストーリー性に乏しく、且つ地味な小説です。でも、僕はこの小説を読みながら
泣いてしまいました。本を読んでいて、なぜ泣いているのか自分でわからないという状況は
このときが初めてでした。雪沼という、静かで無音な世界が、ボーリングのピンをはじく音と、
そこに住む人々が抱えるそれぞれの孤独を吸い込んでゆく。雪沼という町が、どことなく
醸し出している「さびしさ」のようなものを、実に心地良く描き出した作品です。
自信を持ってオススメできる純文学の王道。長編なら『いつか王子駅で』をオススメしたい。


<そのほかの作品>
『おぱらばん』(青土社)     ★★★★★★★★☆☆
『熊の敷石』(講談社文庫)   ★★★★★★★☆☆☆
『いつか王子駅で』(新潮社) ★★★★★★★☆☆☆


57人目  佐伯一麦


  『ア・ルース・ボーイ』(新潮文庫) ★★★★★★☆☆☆☆


<佐伯一麦さん>
週刊誌記者、電気工などの職歴を経て、1984年「木を接ぐ」で海燕新人文学賞を
受賞しデビュー。1990年に「ショート・サーキット」で野間文芸新人賞、1991年に
「ア・ルース・ボーイ」で三島由紀夫賞、1997年に「遠き山に日は落ちて」で木山捷平文学賞、
2004年に「鉄塔家族」で大仏次郎賞を受賞。現在、故郷の宮城県仙台市に住み、
執筆活動をしている、新世代の「私小説」作家さんです。


<あらすじ>
『ア・ルース・ボーイ』 英語教師に「a loose boy」の烙印を押され、県下有数の
進学校を中退した少年と、出産して女子高を退学した少女と、生後まもない赤ん坊。
3人の暮らしは、危うく脆弱なものに見えたが、それは決してママゴトなどではなく、
生きることを必死に全うしようとする崇高な人間の営みであった。
三島由紀夫賞受賞作。


<感想>
[loose] @緩んだ Aずさんな Bだらしのない ・・・・・・D自由な
英語教師の押した烙印はむしろ少年に生きる勇気を与えたのだろう。
僕は誰にも烙印を押されたくない。「loose」の意味は自分が決める。
そんな少年のどこまでも真っ直ぐな思いが、実に心地良く読者に届く、
青春小説の傑作です。
この小説の一番の見所は、少年が新聞配達や電気工の仕事を通じて、
自分にしかできない「ものの見方」を身につけていく過程にある、と僕は思う。
高校というぬるま湯みたいな環境の中では、到底得ることのできない、
見ることのできない景色を、体全身で見ることができた彼を、僕は少し
羨ましいと感じた。
電気工の仕事にまだ慣れていない少年が、天井裏の配管工事を手伝う場面がある。
その場面が印象的だったのでここで引用したい。


ぼくは、太くて長い錐をつけた振動ドリルを下から渡し、天井穴から臨時灯で天井裏を
照らしてやった。そこに思いがけず、にぎやかな世界があらわれて、心底ぼくは驚いた。
いくらかは見知っているさまざまな太さの電気の配管や黒や灰色の電気ケーブルだけでなく、
見慣れないパイプの数々が、入り組んで走っていた。そうして、コンクリートの本当の天井に
向けて伸びている、この見かけだけの石膏ボードの天井や蛍光灯を支えるたくさんの
釣りボルト。それはまるで銀色の樹木の森のようだった。いままで天井だと思っていたところが
じつは地面で、その上にさらにもうひとつの世界が隠されていることをぼくは初めて知った。


自分のまったく知らない海外を旅したりすることで、世界の広さを感じることだって重要だけど、
この少年のように、日常に潜んでいる「もうひとつの世界」を知ることによって、世界の広さを
感じることはもっと大事なんじゃないだろうかと僕は思う。
この少年は、見えないものを見る力を持っていて、物事の本質なんかをよく理解できて
いるように感じる。まさに人間力のある、魅力的な人物です。
僕自身は、この少年のようにはなれないけれど、自分にしかできない「ものの見方」
というのは、身につけていきたいなと思わされた。
私小説っぽくないので、私小説が苦手な方にもオススメです。



58人目  松浦理英子


  『葬儀の日』(河出文庫) ★★★★★★★☆☆☆


  <松浦理英子さん>
  1985年、『葬儀の日』で第47回文学界新人賞を受賞し、デビュー。
  1994年、『親指Pの修行時代』で女流文学賞を受賞。
  他の著書に『セバスチャン』『ナチュラル・ウーマン』などがある。
  『ナチュラル・ウーマン』は、伝説の第1回三島由紀夫賞候補作
  山田詠美、吉本ばなな、高橋源一郎、島田雅彦、佐伯一麦、小林恭二らと
  激戦を繰り広げるも落選。(受賞したのは高橋源一郎)
  また、性に関する著書もあり、著作のほとんどにレズビアンが登場する
  2000年、久々の新作『裏バージョン』を上梓。
  いわゆる「J文学」に属する作家。


  <あらすじ>
  『葬儀の日』 葬式に雇われて人前で泣く「泣き屋」と
  その好敵手「笑い屋」の不吉な〈愛〉を描くデビュー作はじめ三篇を収録。
  特異な感性と才気漲る筆致と構成によって、今日の松浦文学の原型を
  余すところなく示す第一作品集。


  <感想>
  「傷つける」という行為、もしくは「傷つけられる」という行為を介してしか、
  相手とコミュニケートできない、適切な距離を保てない。
  本作はそういう人たちの恋物語です。
  とても大好きな相手を、突然無性に傷つけてみたくなったり。また反対に、
  とても大好きな相手に、ものすごく傷つけられたいという衝動に駆られたり。
  こういう感情って、誰しもが感じるものだと思うのです。
  こういった、精神的SM状態を実に見事に描いてしまうところに松浦理英子の
  魅力があるのだと感じます。ただのビアン小説だと思い込んで、松浦作品を
  手に取らないのは、本当にもったいない。
  この短編集では、表題作の「葬儀の日」が松浦文学のモチーフ的位置を占めていて、
  続く「乾く夏」「肥満体恐怖症」はそれをベースにし、さらにストーリー性を加味した、
  より小説らしい小説になっています。
  個人的には最後の「肥満体恐怖症」が一番好きです。


  <そのほかの作品>
  『ナチュラル・ウーマン』(河出文庫) ★★★★★★★☆☆☆
  『親指Pの修行時代』(河出文庫)   ★★★★★★★★☆☆



59人目  町田康


  『くっすん大黒』(文春文庫) ★★★★★★★★☆☆


  <町田康さん>
  パンクロック歌手、詩人、俳優、小説家。旧芸名は町田町蔵(まちだまちぞう)。
  1981年、ロックバンド「INU」のボーカリストとして、アルバム『メシ喰うな!』
  で歌手デビュー。1992年、「供花(くうげ)」で詩人としてデビューしたのち、
  1996年、「くっすん大黒」で小説家デビュー。野間文芸新人賞、bunkamura
  ドゥマゴ文学賞を受賞。
  2000年には「きれぎれ」で芥川賞を受賞。その他の受賞歴に、萩原朔太郎賞、
  谷崎潤一郎賞、川端康成文学賞などがある。
  独自の語り口(話法)から独特な苦味のある笑いを作り出す、個性あふれる
  スタイルを確立。文学にもブンガクにも迎合しない、唯一無二のアーティスト。


  <あらすじ>
  『くっすん大黒』 三年前、ふと働くのが嫌になって仕事を辞め、毎日酒を飲んで
  ぶらぶらしていたら妻が家を出て行った。誰もいない部屋に転がる不愉快きわまりない
  金属の大黒。今日こそ捨ててこます――。
  しかし、大黒をいざ捨てようと思っても、どうもうまくいかない。
  そうか、自分は豆屋になればいいのだ。毛皮の敷物に立ち上がり、大声で叫んでみる。
  「豆屋でごさい、わたしは豆屋ですよ」
  日本にパンクを実在させた町田康が文学の新世紀を切り拓き、作家としても
  熱狂的な支持を得た鮮烈のデビュー作。


  <感想>
  最高にバカバカしくて、最高におもしろくて、最高にカッコイイ。
  自堕落な男が脱力気味に疾走する様を、テンポのいい独自の文体
  退廃的に描いた、奇跡的傑作です。
  男の生き方がまったくもって退廃的であるのに、そこには生への執着心というか、
  生命力、エネルギーがみなぎっていて、決して読むものを飽きさせません。
  軽やかにすーっと堕ちていく感覚が実に心地良くて、読んでいて病みつきに
  なってしまう、そんな小説です。
  町田康は本当にクソ真面目で神経質な人なんだなぁ、と作品を読むたびに
  思います。一般的な人(完全に社会化されてしまっている人)なら普通に
  素通りしそうな、当然のように存在する矛盾点に、いちいち突っかかっていく。
  この人はきっと嘘がつけなくて、社交辞令なんて言えないタイプの真面目人間
  なんだと思います。
  彼の小説は一見すると滅茶苦茶な風に感じられるかもしれないけれど、
  実はものすごく練りこんで創られた、計算高い作品です。
  それは彼が潔癖というか、先に言ったように嘘のつけない性格だから
  なんだと思います。
  また、そういった性格であるからこそ、非常に個性的なユーモア(真面目さから
  生み出されるバカバカしさ)
が作品にあふれ出てくるのでしょう。
  とにかく笑えるのでみなさんも是非どうぞ。落語が好きな方や、筒井康隆が
  好きな方にはきっとマッチするかと思います。


  <そのほかの作品>
  『きれぎれ』(文春文庫)   ★★★★★★☆☆☆☆
  『夫婦茶碗』(新潮文庫)   ★★★★★★★★★☆
  『告白』(中央公論新社)   ★★★★★★★☆☆☆
  『供花(くうげ)』(新潮文庫)  ★★★★★★☆☆☆☆
  『パンク侍、斬られて候』(マガジンハウス)★★★★★★★☆☆☆



60人目  三浦しをん


  『しをんのしおり』(新潮文庫) ★★★★★★★☆☆☆


  <三浦しをんさん>
  小説家・随筆家。早稲田大学第一文学部卒。
  在学中、出版社への就職活動をしていた際、入社試験の作文から
  編集者に才能を見出される

  就職活動中の経験をもとに描いた「格闘する者に○」で小説家デビュー。
  1998年、Boiled Eggs Onlineのサイトにエッセイ連載開始。
  小説家としては、山本周五郎賞、直木賞、本屋大賞などに何度か
  ノミネートされるも、あと一歩のところで受賞を逃していた。
  2006年、「まほろ駅前多田便利軒」でついに直木賞受賞。
  父は、上代文学・伝承文学の研究者として著名な三浦佑之千葉大学教授。


  <あらすじ>
  『しをんのしおり』 日本の政局も、家族の事件も、人気のドラマも、
  考え始めたらいつのまにかヒートアップ。「読んで楽しく希望が持てる」、
  笑い出したら止まらない、抱腹微苦笑ミラクルエッセイ。


  <感想>
  とにかく面白いとしか言いようがなく、「絶対に電車の中で読めない本
  ランキング」があれば、間違いなくこの本がナンバー1です。
  声を出して笑ってしまうこと請け合いです。
  なにか面白い本を教えてくれと言われたら、まず最初にオススメするのが
  この本だったりします。まさしく鉄板です。
  三浦しをんの「人柄の良さ」みたいなものが、エッセイにそのまま
  表われていて、読んでいるだけで癒されてしまいます。
  妄想が趣味のオタクでありながら、自分を客観的に見る目を持っていたり。
  なんでも面白おかしく書いているようでいて、実は鋭い観察眼を持っていたり。
  そういうところも含めて、三浦しをんという作家はほんとに凄いなと思います。
  小説よりも絶対にエッセイの方がオススメなので、みなさんもぜひぜひ
  読んでみてください。


  <そのほかの作品>
  『格闘する者に○』(新潮文庫)    ★★★★★★☆☆☆☆
  『妄想炸裂』(新書館ウィングス文庫) ★★★★★★★★☆☆
  『乙女なげやり』(太田出版)     ★★★★★★★☆☆☆
  『桃色トワイライト』(太田出版)   ★★★★★★★☆☆☆
  『私が語りはじめた彼は』(新潮社)  ★★★★★☆☆☆☆☆