*Books ログ2*
21人目 村上春樹(2005/10/13)
★
22人目 村山由佳(2005/10/15)
★
23人目 三浦綾子(2005/10/19)
24人目 辻内智貴(2005/10/23)
25人目 麻耶雄嵩(2005/10/28)
26人目 銀色夏生(2005/11/03)
27人目 辻仁成(2005/11/08)
28人目 綿矢りさ(2005/11/13)
29人目 湯本香樹実(2005/11/21)
30人目 殊能将之(2005/11/25)
31人目 長野まゆみ(2005/11/30)
★
32人目 三崎亜記(2005/12/07)
33人目 山田太一(2005/12/14)
34人目 鈴木清剛(2005/12/21)
35人目 絲山秋子(2005/12/27)
★
36人目 白石一文(2006/01/03)
37人目 池澤夏樹(2006/01/10)
38人目 梨木香歩(2006/01/17)
39人目 森博嗣(2006/01/18)
40人目 島本理生(2006/01/22)
『パン屋再襲撃』(文春文庫) ★★★★★★★★☆☆
<村上春樹さん>
なんの説明も要らないでしょう。村上春樹さんです。
『風の歌を聴け』で群像文学新人賞を受賞してデビュー。以降、多くのベストセラー、
ロングセラーを出し、読者層を広げています。
主な作品に『ノルウェイの森』『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』などがあります。
好きな作家ランキングでは、男性作家の部門で必ず上位に入る人です。
2006年にはノーベル文学賞の有力候補として名前が挙がるも、
あと一歩のところで受賞を逃しました。世界的に評価されている作家さんです。
<あらすじ>
『パン屋再襲撃』 彼女は断言した、「もう一度パン屋を襲うのよ」
学生時代、パン屋を襲撃したあの夜以来、彼にかけられた呪いをとくための、
このたくらみの結果は・・・。
表題作ほか、5作品収録の短編集。『象の消滅』『ファミリー・アフェア』など。
<感想>
村上春樹はけっこう好きです。女の子は嫌いな人が多いみたいやし、
その理由もなんとなくわかる気はしますが。
村上春樹の良さは僕が語らずとも、いろんな文学者さんが研究してはるので、
詳しくは書きません。
とにかく
独特の世界観がいいですね。
オシャレやのに軽くないところが好きやったりします。
そして、特徴的なのが翻訳調の文体と洒落たレトリック。
これぞ村上春樹、といった感じでしょうか。
そして、この『パン屋再襲撃』。この短編集はどれを読んでもけっこう楽しめるはず。
僕のオススメは『像の消滅』と『ファミリー・アフェア』です。どっちも30ページくらいの
短い短編小説なんで、活字が苦手な人もどうぞ。
小説自体が嫌いな人は『村上ラジオ』がオススメ。さくっと読めるおもしろエッセイです。
<そのほかの作品>
『風の歌を聴け』(講談社文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『1973年のピンボール』(講談社文庫) ★★★★★☆☆☆☆☆
『羊をめぐる冒険』(講談社文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『ノルウェイの森』(講談社文庫) ★★★★★★★★★☆
『海辺のカフカ』(新潮文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『アフターダーク』(講談社) ★★★★★★☆☆☆☆
『村上朝日堂』(新潮文庫) ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
『村上ラジオ』(新潮文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『中国行きのスロウ・ボート』(中公文庫)★★★★★★☆☆☆☆
『BADKIDS』(集英社文庫) ★★★★★★☆☆☆☆
<村山由佳さん>
恋愛小説の書き手として有名な方です。
『天子の卵』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
『おいしいコーヒーのいれ方』シリーズで人気を博しました。
女性作家さんですが、
男の子が主人公の恋愛小説を多く書いており、
そのためか男性ファンが多いようです。
『星々の舟』で第129回直木賞を受賞しています。
<あらすじ>
『BAD KIDS』 高校の写真部の部長、都。彼女が絶好の被写体と狙いを
つけたのはラグビー部の隆之だった。しかし、
彼は同性のチームメイト宏樹に
思いを寄せていた。年上のカメラマンとの関係に苦悩する都と、同性の親友に
恋をしてしまった隆之。二人は傷つき、悩みながらもお互いに寄り添い、
いたわり合う。やがて、二人はそれぞれの決断を下すことになるのだが・・・
同性愛をテーマにした青春小説です。
<感想>
ノンケへのせつない恋が描かれています。
親友のことを好きになってしまった隆之にすごく感情移入してしまいました。
「同性愛」を扱った小説はそれほど多くないので、ゲイの方は必読です。
ノンケへの恋は絶対にかなわないってわかってるだけに辛い。
その相手が好きな女の子の話とかしだすと、すごい嫉妬したり・・・
友達関係が壊れるのがイヤで自分の気持ちを伝えられなかったり・・・
そんな気持ちがうまく書かれています。
村山由佳さんは、本当に
男の子を描くのが上手いなと、この小説を読んで思った。
正確に言うと、男の子から見た女の子の描き方(男の子視線の描き方)が
すごくナチュラルです。女性作家さんなのに、こんな風に描けるのかと驚きます。
ストレートで無駄な描写が少ない文体なので読みやすいです。
<そのほかの作品>
『天使の卵』(集英社文庫) ★★★★★★☆☆☆☆
『塩狩峠』(新潮文庫)
★★★★★★☆☆☆☆
<三浦綾子さん>
敗戦後間もないころ、肺結核と脊椎カリエスを併発し、
13年間の闘病生活をおくる中、キリスト教に目覚め、52年に受洗。
64年、朝日新聞の一千万円懸賞小説に『氷点』が入選し、
一躍有名になりました。
代表作は『塩狩峠』『道ありき』『銃口』など。
<あらすじ>
『塩狩峠』 やっとの思いでこぎつけた婚約者との結納の日。
鉄道職員である永野信夫は列車に乗って札幌へ向かう途中だった。
その列車が塩狩峠の頂上にさしかかった時に事故は起きた。
突然客車が離れ、暴走する列車。恐怖に怯える乗客たち。
その時、信夫がとった行動とは…
愛と信仰に貫かれた一青年の生涯を描き、
人間存在の意味を問う傑作。
<感想>
この小説のテーマは「犠牲」です。
自分の命を犠牲にして、大勢の乗客の命を救った青年の、
幼少期から青年期までのエピソードが丹念に書かれています。
特に主人公が幼少期に、物置の屋根から町人の子どもに突き落とされた
時のエピソードはかなり印象的でした。
最後の場面の三堀という青年の描き方もベタではあるけれど、
上手いなと思わされました。
この小説は泣ける小説として有名ですが、それ以上に考えさせられる
ところが多かったように思います。
「愛」とは、自分の一番大事なものを相手に与えることである、という
キリスト教の考え方が色濃く作品の中に出てきます。
その一番大事なものとは、自らの命のことです。
誰だって自分を犠牲にするのはイヤだ、という風潮が根強いこの世の中に、
「本当にそうだろうか?」という問いかけを三浦さんはこの作品でされたのだと
思います。
「人が生きる」ことの意味を、深く考えてみたいなぁ
と思うきっかけになりました。
読後感の良い小説でした。
『セイジ』(筑摩書房)
★★★★★☆☆☆☆☆
<辻内智貴さん>
音楽の世界から文学の世界へと来られる方は結構多いですが、
実は辻内さんもその一人です。
『セイジ』が太宰治賞の最終候補作となり、注目されるようになりました。
2001年には『多輝子ちゃん』で見事太宰治賞を受賞。
佳作どまりのイメージを払拭する『セイジ』の爆発ぶりは、
全国の書店員を驚かせました。
のびやかな文体が心地良く、登場人物がいきいきとしている。
そこが辻内さんの小説の良さだと感じます。
<あらすじ>
『セイジ』 大学4年生の最後の夏休みを自転車旅行に費やすことにした主人公。
田舎の山道のドライブインにある喫茶店「HOUSE475」に偶然たどり着き、
そこでひと夏を過ごすことになる。
そこで出会った「セイジさん」との出来事を描いた小説です。
衝撃のラストが涙を誘う感動の物語です。
実はこの小説、発売当時はまったく売れず、一時は絶版の危機に追い込まれ、
断裁寸前でした。とある書店の店員がこの小説の魅力に気づき、
次々と発注をかけて売りさばいていく中でベストセラーとなり、
全国区の人気となりました。
<感想>
世の中には、物事がわかりすぎたり、見えすぎたりする人が少なからずいる。
この小説に出てくる「セイジさん」もそういう人なんだと思う。
頭が良すぎるが故に、普通の人なら通り過ぎてしまうところに思考をとどめ、
世の中のありとあらゆることに意味を見出そうとしてしまう。
たとえば、「人はなぜ生きているのか」「
人は何のために生きているのか」
ということだ。これはこの小説の主題でもあるが、こんなことは
はっきり言って答えがない。
だから、たいていの人はそんなことを考えて生きてはいない。
それはたいていの「フツウな人」には、物事の本質を深く追求しようとしない
「
無意識の鈍感さ」みたいなものがあるからだ。
書店員の書評を見ていると、「大切な人が苦しんでいる時、自分に何ができるのか?」
を考えさせられたという意見や、この小説を奇跡と感動の物語だと捉える意見も
あるけれど、僕の意見は違います。
この小説で著者が伝えたかったことは、この世界のすべてのことには意味がなくて、
誰もが生きる意味を持っていない、ということだと僕は感じました。
そんな世界の中で人はいかにして自分らしく生きるべきなのか、
ということを読者に問いかけているのではないでしょうか。
文章は荒削りな感じがしますが、すごく読みやすいです。
無駄な描写も一切なく、わかりやすい小説だと感じました。
併録されている『竜二』もなかなか面白かったです。
どちらかと言うと『セイジ』よりも『竜二』の方が僕の好みでした。
<そのほかの作品>
『信さん』(小学館) ★★★★★☆☆☆☆☆
『翼ある闇』(講談社文庫)
★★★★★★★★☆☆
<麻耶雄嵩さん>
本格ミステリの書き手です。綾辻行人さん、法月綸太郎さん、我孫子武丸さん、
有栖川有栖さん、歌野晶午さんなど「新本格第一世代」に続く書き手として、
90年代以降にデビューした
「新本格第二世代」の一人。
同時期デビューに芦辺拓や二階堂黎人がいます。
『翼ある闇』は綾辻行人さん、島田荘司さんから
圧倒的賛辞を受けてデビュー
するにいたりました。本作以降も本格色の強い作品をどんどん上梓されています。
<あらすじ>
『翼ある闇』 京都近郊に建つ洋風古城のような館・蒼鴉城。
そこに「私」が足を踏み入れたとき、もうすでに惨劇は始まっていた。
次々に起こる連続殺人とその奇妙な殺人現場。
首なし死体、謎の密室、
蘇る死者、見立て殺人・・・。事件をめぐる二人の名探偵の対決は見ものです。
どんでん返しの連続の果てに迎える壮絶な結末とは・・・
<感想>
最後の最後まで結末が全く読めない。これでもかというくらいドンデン返しを
食らわされて、「もう参りました・・・」って言ってるのに、また投げられて・・・
ほんとにこんなことの繰り返しです。でも、素直に楽しめました。
見立て殺人にしないといけなかった理由が論理的に説明されているし、
オリジナリティ溢れる密室トリックやプロットを作っているし、
なんといっても館や登場人物の雰囲気がいかにも「本格」っぽくて、
ドキドキしながら読みました。
カーテンフォールの瞬間まで油断のできない作品です。
<そのほかの作品>
『夏と冬の奏鳴曲』(講談社文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『ミタカくんと私』(新潮文庫)
★★★★☆☆☆☆☆☆
<銀色夏生さん>
詩集、エッセイ、小説といろいろ書かれています。
詩集「つれづれノート」シリーズが大人気で、
初めての小説となった『ミタカくんと私』も高評価を受けています。
新潮文庫の100冊にも毎年選ばれているロングセラー作品です。
女性ファンからの支持が厚い作家さんです。
<あらすじ>
『ミタカくんと私』 主人公ナミコの幼馴染であるミタカくんは、
一見とっつきにくいけど、顔がいいから女の子にモテる。
そんなミタカくんは、ナミコの家に日常的にいついている。
そんなミタカくんとナミコのつれづれ恋愛小説です。
<感想>
特に何も起こらず、なんとなく時が過ぎていく。
こういった日々が嫌いではない僕は、この小説をとても楽しめました。
この小説では、ほとんど何も起こらず、なんとなく時が過ぎていきます。
そんな雰囲気がとても気に入りました。
弟のミサオや強烈なキャラのママがかなり印象的でした。
こんな家なら、僕だっていついてみたい。毎日が楽しくて仕方ないと思う。
ミタカくんが羨ましい…。
幼馴染の男の子との恋。しかも、日常的に自分の家にいる男の子との恋って、
やっぱりドキドキしますね。そんな恋がしてみたい。
女の子には特に受けのいい小説だと思います。
『サヨナライツカ』(幻冬舎文庫)
★★★★★★☆☆☆☆
<辻仁成さん>
89年『ピアニシモ』ですばる文学賞を受賞しデビュー。
その後『海峡の光』で芥川賞、『白仏』で
フランスの文学賞である
フェミナ賞を日本人として初めて受賞しました。
江國香織さんとの共著、『冷静と情熱のあいだ』は一時期かなりの
話題になりました。
<あらすじ>
『サヨナライツカ』 「
人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと
愛したことを思い出すヒトにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す」
結婚を間近に控えた東垣内豊を訪れてきた謎の美女・沓子。
この奇妙な出会いから始まった、二人の激しく狂おしい性愛の日々。
バンコクの地で繰り広げられる二人の恋にもついに終わりが来る。
別れを選択した彼らの25年後とは…。恋愛小説の王道です。
<感想>
ある女の子の友達がこの小説を読んで、「声を上げて泣きました」と
言っていたので読んでみました。かなりベタやなぁ、と感じながらも
泣いてしまいました。恋愛小説のお手本みたいな小説です。
最後まで飽きずに読めたし、途中考えさせられるところも結構あったと思う。
僕もきっと死ぬときは、愛されたことより愛したことを思い出すんだろうな、
と思ってしまった。僕の考えだけど、
だいたいの行為というのは
「したこと」よりも「されたこと」の方が印象に残りやすいのではないかと思う。
もちろん個人差があるんだろうけど。だって日常的にも、ある行為を
「した人」はその行為自体を忘れているのに、「された人」は忘れていない
というケースが多々ある。たとえば、恩であるとか仇であるとか。
でも、恋愛に限ってはそうではないように思う。「あなたは死ぬとき、
愛されたことを思い出しますか? それとも愛したことを思い出しますか?」
という質問を世界中の人にすれば、きっと「愛したことを思い出す派」が
多数派になるだろうなと思うんです。なんでかはわからないけど。
恋愛小説で何かいい小説はない?って聞かれたら、
僕は江國香織さんの『きらきらひかる』か、絲山秋子さんの『袋小路の男』か、
この『サヨナライツカ』を薦めるようにしています。
恋愛小説が好きな人にはもってこいの小説だと思います。
<そのほかの作品>
『海峡の光』(新潮文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『ワイルドフラワー』(集英社文庫) ★★★★★★☆☆☆☆
『インストール』(河出文庫)
★★★★★★☆☆☆☆
<綿矢りさ>
『インストール』で文藝賞を受賞し、17歳で衝撃デビュー。
2004年には『蹴りたい背中』で
芥川賞を史上最年少で受賞。
金原ひとみの『蛇にピアス』とのW受賞はかなりの話題になりました。
今後の動きに注目が集まる天才作家です。
<あらすじ>
高校生の朝子は、急遽学校に行くことをやめ、受験勉強もやめてしまう。
そんなある日、ゴミ捨て場で出会った小学生のかずよしに誘われて、
コンピューターでボロ儲けを企てる。
押入れに隠されたコンピューター部屋から覗いた大人の世界を通して、
二人の成長を描く、第38回文藝賞受賞作。
<感想>
とにかく文章が上手いな、と初めて読んだときにそう思いました。
17歳やのに・・・というよりは、17歳だからこそ書けたのかな・・・と感じます。
まだ読んだことがない人は、立ち読みでいいので冒頭部分だけでも読んでみてください。
流れるような、それでいて頭にしっかり残っていく、そんなパーフェクトな文章なので。
僕は本を読んでると、ものすごく句読点の位置が気になったりします。
「なんでここに句点が入らんの!」とか・・・
でも、綿矢さんの文章は、句点の位置もそうやけど、語尾の変化、長い文章の引っ張り方、
どれをとっても完璧!!(文庫の解説で高橋源一郎さんも褒めています)
試しに音読してみるとわかります。どれほど読みやすくて、心地の良い文章か。
小説の内容についても、そこそこ面白いです。17歳が書いた、ということを抜きにしても。
この作家さんの今後には要注目です。
<そのほかの作品>
『蹴りたい背中』(河出書房新社) ★★★☆☆☆☆☆☆☆
『夏の庭』(新潮文庫)
★★★★★★★★★☆
<湯本香樹実さん>
日本を代表する児童文学作家さんです。
処女作の『夏の庭』は、日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞、
米国バチェルダー賞、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞を受賞し、
世界的に評価されました。映画化や舞台化もされています。
<あらすじ>
『夏の庭』 夏休みをひかえた3人の少年たちは、町外れに住んでいる一人の
老人に興味を持つ。人の「死」に興味を持っていた3人は、今にも死にそうな
その
老人が死ぬ瞬間を自分たちの目で見ようと、老人を「観察」し始めた。
日ごとに高まる好奇心とは裏腹に、老人は少しずつ元気になっていくようだ。
いつしか
少年たちの「観察」は、老人との深い交流へと姿を変えてゆく・・・
<感想>
この小説を読んで泣けないやつは鬼です。僕は何回読み返しても泣いてしまいます。
新潮文庫の読者アンケート第3位に輝くだけあって、児童文学と言えども、いろんな
読者層から支持されているんだなということがわかります。最近では、中学2年の
国語の教科書にもこの作品が登場します。
「死」というものに対する興味から、老人を観察し始めた少年たち。そんな彼らは
いつのまにかその老人と仲良くなってしまう。老人との交流を通して、成長していく
少年たちの姿、心情の変化、死に対する思い。そのようなものがとても丁寧に書かれ
ています。そして、
最後の結末には本当に涙が止まらなくなります。
まさに日本版スタンド・バイ・ミー。未読の方は是非是非お読みください!!
<そのほかの作品>
『ポプラの秋』(新潮文庫) ★★★★☆☆☆☆☆☆
『ハサミ男』(講談社文庫)
★★★★★★☆☆☆☆
<殊能将之さん>
1999年、『ハサミ男』で第13回メフィスト賞を受賞しデビュー。
その後も精力的に本格ミステリ作品を上梓しておられます。
主な作品に『美濃牛』『黒い仏』『鏡の中は日曜日』などがあります。
叙述トリックが冴えわたる、技巧派の作家さんです。
<あらすじ>
『ハサミ男』 美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯
「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げていた最中、
自分の手口を
真似て殺された彼女の死体を発見することになってしまう。自分以外の人間に、
なぜ彼女を殺す必要があったのか。「ハサミ男」は調査を始める。
精緻にして大胆な仕掛けが施された、本格ミステリの傑作です。
<感想>
文章の構成で人を騙す「叙述トリック」が使われた本格ミステリを僕は好みます。
この作品には精緻にして大胆な仕掛け(叙述トリック)が施されており、僕の
心を奪うには十分な作品でした。
でも、実はこの作品のネタには途中で気付いてしまいました。
「なるほど、そういうトリックで来たか・・・」なんて思いながら、それでも最後まで
楽しんで読ませてもらいました。
叙述トリックが使われた本格(新本格)ミステリというのは、たいてい映像化不可能
なものが多いんです。映像化してしまうと犯人やトリックが絶対にわかってしまうと
いうものがほとんど。綾辻さんの「館シリーズ」なんてその最たるものです。
でも、この『ハサミ男』はなんと映画化されてしまいました。
どんな風に映像化したのかは、この映画を見ていない僕にはわからないんですが、
絶対に映像化は不可能だと世間からも思われていたんで、驚きました。
なぜ、映像化できないのか。それは本作を読めば必ずわかります。
買って損なし。
叙述トリックの傑作です。
「ハサミ男」というタイトルに騙されないように・・・(←ネタばれ?)
『白昼堂々』(集英社文庫)
★★★★★★★☆☆☆
<長野まゆみさん>
1988年に『少年アリス』で第25回文藝賞を受賞し、デビューして以来、
数多くの著作を世に送り出しています。
ボーイズラブを文学にした第一人者でもあります。
少年の描き方の巧さ、卓越した情景描写、少し現実離れした世界の描き方、
どれをとっても素晴らしいです。
国語の教科書や問題集、高校入試の問題でお目にかかることも多い作家さんです。
<あらすじ>
『白昼堂々』 1976年初冬。由緒ある華道家元の若き跡継ぎである原岡凛一は、
従姉・省子の男友達だったアメリカンフットボール部のエース氷川享介と出逢う。
その邂逅が、やがて二人の運命を変えていくことに・・・
少年たちの切ない恋を描く、好評シリーズ第1弾。
<感想>
ボーイズラブを文学にした人。それが長野まゆみさんです。
ゲイの主人公(凛一)とノンケの享介とのキスシーンにずっとドキドキしてました。
凛一と正午のキスシーンを目撃し、なぜかノンケの享介が嫉妬する場面、
ものすごく快感でした。もっと妬いちゃいなさい、なんて心で唱えながら読んでたほど。
嫉妬心こそ真の愛のカタチなのですね。
ストーリー展開が早く、読み始めると止まらなくなるんですが、それは一重に長野さんの
描写力がなせる技なのでしょう。
長野さんの小説を読んでいると、どうしてもストーリー展開に目を奪われがちですが、
ひとつひとつの情景描写がものすごく丁寧にされていて、そのおかげで物語の世界に
すーっと入っていけるのだと思います。
小説で描くことが難しいのは、「色」と「におい」だと僕は思うんですが、長野さんの
作品では、この
「色」と「におい」がリアルに丁寧に描かれています。
特に植物の色の描写にはいつも唸らされます。目の前に広がる草いきれの匂いが
本を読んでいる自分の鼻に届いてきそうになるほどです。
そういった情景描写にも注意して読んでみると、さらに長野作品を楽しめる
かもしれません。
<そのほかの作品>
『鳩の栖』(集英社文庫) ★★★★★★★★☆☆
『彼等』(集英社文庫) ★★★★★★☆☆☆☆
『夏帽子』(河出文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『となり町戦争』(集英社) ★★★★★★★☆☆☆
<三崎亜記さん>
2005年に『となり町戦争』で第17回すばる新人賞を受賞しデビュー。
すばる新人賞の
選考会を騒然とさせた問題作は、デビュー作にも関わらず
直木賞の候補作になりました。
先月上梓された新刊『バスジャック』(集英社)は、デビュー以来の2作目
となるが、
周囲からの期待はかなり高い。
<あらすじ>
『となり町戦争』 ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から
敵地偵察を任ぜられた。だが、音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないまま。
それでも戦争は着実に進んでいた。
シュールかつ繊細に、「私たち」が本当に戦争を否定
できるかを問う衝撃作。第17回すばる新人賞受賞作。
<感想>
戦争のない世界が日常で、戦争のある世界が非日常。本当にそうだろうか?
戦争を日常の一部として理解することが、実は正しいんじゃないか。
この本を読んでいてそんなふうに感じた。
となり町との戦争が始まったはずなのに、まったく戦争の気配が感じられない主人公。
でも、確実に死者が増えていることが町の広報紙からわかる。
「戦争の音を、光を、気配を感じ取ってください」
役場職員・香西さんのこの言葉に、僕は鳥肌がたちました。
そして、こう思いました。「
僕は本当に戦争を否定できるだろうか・・・」
両者間にどのような背景があって、どのような隔たりがあって、どのような形で戦争に
突入したのか、どこでどのように戦争が起こっているのか・・・
そんなことすら知らないまま、あまりにも静かで奇妙な戦時下の日々を送ることと
なった主人公を、果たして「おかしい」と言えるのだろうか。
自分に重ね合わせて読んでしまいました。
「
卓抜な批評性か、無意識の天才か。いずれにせよ桁はずれの白昼夢だ」
五木寛之さんの選評のとおり、この小説はスゴイです!!
<そのほかの作品>
『バスジャック』(集英社) ★★★★★☆☆☆☆☆
『異人たちとの夏』(新潮文庫) ★★★★★★★☆☆☆
<山田太一さん>
1934年生まれ。もともと
テレビドラマの脚本家さんとして活躍しておられ
ました。「男たちの旅路」「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」を始め、
多くの名作を手がけています。
一方、作家としても活躍。代表作に「飛ぶ夢をしばらく見ない」「終わりに見た街」
など多数あります。「異人たちとの夏」で第1回山本周五郎賞を受賞しています。
舞台脚本の分野でも、意欲作を次々に発表されています。
<あらすじ>
『異人たちとの夏』 妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオ・ライターは、
幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢う。こみ上げてくる懐かしさ、
心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」
と懇願した・・・。静かすぎる都会のひと夏。
異界の人々との交渉を、ファンタス
ティックに、鬼気迫る筆で描き出す、名手山田太一の新しい小説世界。
第1回山本周五郎賞受賞作。
<感想>
この小説は、
ふしぎな小説です。そして、
美しい小説です。
現実と非現実の境界線を、うまくリアリティを持たせて書いたと
いうべきでしょうか。
妻子と別れた中年男が、12歳の頃死別したはずの父母にそっくりな
夫婦に出逢うところから、この物語は始まります。
この異界の父と母に逢うたびに、自分の体が憔悴していくことに
気付き、最後には別れを告げに父母の元へ行くのですが・・・
ところどころ、ぐっとくるところがあり、
泣きそうになりながら
読みました。一昔前の小説ですが、それほど古さを感じない素晴らしい
小説です。
脚本家出身ということもあり、小説作法というものはあまり心得て
おられないみたいですが、特に細部に気になるところもなく、
スラスラ
読めることはたしかです。
<そのほかの作品>
『終わりに見た街』(中公文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『ラジオ デイズ』(河出文庫) ★★★★★★★☆☆☆
<鈴木清剛さん>
コム・デ・ギャルソンのデザイナー出身という異色の経歴。
97年に『ラジオ デイズ』で第34回文藝賞を受賞しデビュー。
99年に『ロックンロールミシン』で第12回三島由紀夫賞を受賞。
阿部和重らと並んで
J文学の旗手となる(?)
<あらすじ>
『ラジオ デイズ』 小学校時代の友人が、突如オレの六畳にころがり
こんできた。断りきれずに始まった男二人の生活。そのうちなぜか居候に
親切な彼女のチカも加わり、奇妙な一週間が始まって・・・
胸をしめつける傑作青春小説。第34回文藝賞受賞作。
<感想>
僕はこの小説が好きです。
その理由を書くと、ほんとにこの作品を褒めてるのか?
って言われそうなので、あまり書きたくはないのですが・・・
まず、
ぎこちない文章が逆に新鮮でいい。
教養の無さなのか、単に頭がからっぽなのか、
難しい主題などは
いっさい無い。でも、しっかりと「小説」としてのツボをおさえて
いるから、読んでて飽きがこないし面白い。
同じような状況を書いた小説に、池澤夏樹さんの『スティルライフ』
という作品があるけれど、比較してみると面白いかもしれません。
文学というのは池澤さんのようなインテリだけのものではないんだな、
とつくづつ感じてしまいます。
著者が背伸びをしていないせいか、その自由奔放さがこの作品にも
よく表れていて、読んでいる方もスッキリするはずです。
<そのほかの作品>
『ロックンロールミシン』(新潮文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『逃亡くそたわけ』(中央公論新社) ★★★★★★★★☆☆
<絲山秋子さん>
僕が今もっとも注目している作家さんです。
2003年、『イッツ・オンリー・トーク』で文学界新人賞を受賞しデビュー。
2004年、『袋小路の男』で川端康成文学賞を受賞、本屋大賞2005で4位。
『海の仙人』で芸術選奨・文部科学大臣新人賞受賞。
芥川賞、直木賞に最終候補まで残るも惜しくも落選が続く。
私的ブレイク寸前の作家さん!!
<あらすじ>
『逃亡くそたわけ』 躁の花ちゃん(21歳♀)と鬱のなごやん(24歳♂)が
博多の精神病院を大脱走。なごやんの愛車「おんぼろルーチェ」で九州を南下
していくロードムービー。鬱の幻聴 「
亜麻布二十エレは上衣一着に値する」 に
苦しみまくる花ちゃんは、九州の最南端で何を想うのか?
野菜泥棒に無銭飲食、無免許運転、飲酒運転。
「キチガイ」二人の掛け合いは漫才のようで楽しい。
読んで損なしの直木賞落選作。
<感想>
九州の最南端で「くそたわけっ」と叫ぶ。
『セカチュー』なんかより断然おもしろいです。
逃亡劇と花ちゃんの九州弁が見事にマッチしていい感じ。
すべてを説明しすぎないところがとてもいい小説世界を作り出しています。
情景描写、心理描写、台詞、行間のどれからも「ユーモア」が湧き出ていて、
一気読みさせてくれること間違いなし。
おもしろさに隠れた「怖さ」を巧く書ききる作者の腕は見事。
「とにかく逃げないといけない」「逃げることに理由はない」
そういう気持ちが少しわかるような気がします。
ラストに近づくに連れて、「亜麻布二十エレは上衣一着に値する」という幻聴が
だんだんと遠ざかっていく様子がすごくイイ!!
なごやんの人物描写も抜群に素晴らしい。
直木賞とってほしかった・・・
<そのほかの作品>
『海の仙人』(新潮社) ★★★★★☆☆☆☆☆
『袋小路の男』(講談社) ★★★★★★★★☆☆
『沖で待つ』(文藝春秋) ★★★★★☆☆☆☆☆
『イッツ・オンリー・トーク』(文春文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『僕のなかの壊れていない部分』(光文社文庫) ★★★★★★★☆☆☆
<白石一文さん>
2000年、『一瞬の光』でデビューし注目を集める。
人間が生きることの大切さを突き詰め、読者の内面を見つめ直させる
力に溢れた作風で有名です。
本作『僕のなかの壊れていない部分』がロングセラーとなり、2003年
には21年間勤めていた出版社を退社し、作家専業となる。
2004年に上梓された『見えないドアと鶴の空』では、小説の懐の深さを
実証したとの世評が高い。
<あらすじ>
『僕のなかの壊れていない部分』
どうして僕は自殺しないのだろう?
出版社に勤務する29歳の「僕」は3人の女性と同時に関係を持ちながら、
その誰とも深い繋がりを結ぼうとしない。一方で、自宅には鍵をかけず、
行き場のない若者2人を自由に出入りさせていた。
常に、生まれてこなければよかった、という絶望感を抱く「僕」は、
驚異的な記憶力を持つ。その理由は、彼の特異な過去にあった。
生と死の分かちがたい関係を突き詰める傑作。
<感想>
なんとも
思弁的な小説を書く、個性的な作家さん。
誰にも似てない作家さんだと思います。
この作品に関しても、「
人間は何のために生きるのか」を愚直なまでに
真正面から考えようとしていて、読んでいる方もすごく考えさせられます。
この小説で一番「おぉっ!」と思わされたところ↓
「自分がいずれは死んでしまう――という事実の底深い意味を捉えない人間は、
必ずや自らを殺すか、他人を殺すかのどちらかを選択しなければならなくなって
しまうのだ。この世界のただならぬ無慈悲さの正体は、ひとえにそうした選択を
迫られてしまうところにある」
突き詰めた思考の末にたどりついた結果として、この文章が生まれたんだな、
と僕は素直に感じました。この一文だけで十分この本を読む価値があります。
この世の中に「絶対」ということはない。でも、唯一あるとすれば、
「
人間はいずれ死んでしまう」ということ。これは絶対。
人は普段、自分が死ぬということについて考えようとしない。それは、自分が
いつか必ず「死ぬ」という事実が「絶対」すぎるが故に、逃げたい気持ちになる
から、あえて考えようとはしないんじゃないのかな。
でも、自分がいずれ死んでしまうということをちゃんと自覚し、「死ぬ」とは
一体どういうことなのかを粘り強く考えていかないと、自分が生きていく意味に
ついて答えを出すことができないんじゃないのか・・・
なんて、めずらしく考えさせられました。
逆説的?に言えば、人間が永遠に生きることができる生き物なら、人間が生きる
意味はない、ということかな。
人間は絶対に死ぬという事実があるから、人間の
生きる意味がある。そういうことなのかな。
村上春樹さんの言葉。「
生は死の対極ではなく、その一部として存在している」
白石さんの小説を読んで、この言葉の意味がよく理解できたように感じます。
「生きること」について真剣に考えさせてくれたこの本に感謝!
『スティル・ライフ』(中公文庫) ★★★★★★★☆☆☆
<池澤夏樹さん>
1987年、『スティル・ライフ』で中央公論新人賞を受賞。
この作品で第98回芥川賞も受賞しました。
1993年には、『母なる自然のおっぱい』で読売文学賞、
『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2000年には、
『花を運ぶ妹』で毎日出版文化賞を受賞しています。
幻想的な世界観がすばらしくいい作家さんです。
<あらすじ>
『スティル・ライフ』 まだ自分の生き方を模索中の「ぼく」はバイト先で、
少し年上でかなり世間を歩いてきたらしい「佐々井」という男と出会う。
二人は仕事の帰りに立ち寄るバーでしばしば話し込む。
佐々井の独特の語り口と彼の語る宇宙や微粒子の話に「ぼく」はすっかり
彼の世界に引き込まれていく。佐々井との出会いにより、「ぼく」の世界を見る
視線は変わってゆく。第98回芥川賞受賞作。
<感想>
とにかく池澤さんの小説の世界観がものすごく好きです。
すーっと引き込まれてしまいます。そして、文章が格段に上手い!
一部を引用してみます↓
「雪が降るのではない。雪片に満たされた宇宙を、ぼくを乗せたこの世界の方が
上へ上へと昇っているのだ。静かに、滑らかに、着実に、世界は上昇を続けていた。
ぼくはその世界の真中に置かれた岩に坐っていた。岩が昇り、海の全部が、厖大な
量の水のすべてが、波一つ立てずに昇り、それを見るぼくが昇っている。雪はその
限りない上昇の指標でしかなかった」
パーフェクト!!
「ぼくは雪の降るなかで佇んでいた」ってだけのことやのに、こんな風に表現できる
なんてスゴイです。池澤さんの文章は、
修辞や言葉の入れ替えによる独自性ではなく、
思考そのものの奥深さを感じる文章なのです。本当にスゴイです。
この文章と幻想的な世界観はやみつきになるはず。ぜひご一読を。
<そのほかの作品>
『バビロンに行きて歌え』(新潮文庫) ★★★★★★☆☆☆☆
『南の島のティオ』(文春文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『夏の朝の成層圏』(中公文庫) ★★★★★★☆☆☆☆
『西の魔女が死んだ』(新潮文庫)
★★★★★★★★★★
<梨木香歩さん>
イギリスに留学し、
児童文学者であるベティ・モーガン・ボーエンに師事。
『西の魔女が死んだ』で日本児童文学者協会新人賞、新美南吉児童文学賞、
小学館文学賞を受賞。『裏庭』で児童文学ファンタジー大賞を受賞。
主な作品に『家守綺譚』『からくりからくさ』『沼地のある森を抜けて』
などがある。
児童文学の作家さんでしたが、特に最近は大人向けの作品も
多く描かれています。
<あらすじ>
『西の魔女が死んだ』 中学に進んでまもなく、どうしても学校へ足が
向かなくなった少女まいは、季節が初夏へと移り変わるひと月あまりを、
西の魔女のもとで過ごした。西の魔女ことママのママ、つまり大好きな
おばあちゃんから、まいは魔女の手ほどきを受けるのだが、魔女修行の
肝心のかなめは「何でも自分で決める」ということだった。喜びも希望も、
もちろん幸せも・・・。
新潮文庫の読者アンケート第1位に輝いた、
万人受けすること
間違いなしの傑作。
<感想>
この作品に関しては何も言う必要がありません。
読んでもらえれば、全員が「いい小説だった」と言うでしょう。
僕は何度読んでも、
最後の3ページで大号泣してしまいます。
欠点の見当たらない完璧すぎる小説だと思います。
僕のココロはすごく汚れていて、すごく弱くて、目の前に困難な
物事が立ちふさがれば、目をつむって見なかったことにし、
それに対する自己嫌悪は、人のせいにすることでうやむやに
してしまう。そんな風に弱くて、ちっぽけな僕だからこそ、
この小説を楽しめたのかもしれません。
まいと一緒に西の魔女のもとで修行をした気分になりました。
この小説には、幸せになるためのヒントがたくさん隠されているような
気がします。なにか嫌なことがあったり、迷うことがあったときに
この本を読むといつも勇気づけられます。
人生の指南書みたいな小説だなと僕は感じています。
絶対に読んで損はないはずです。
<そのほかの作品>
『家守綺譚』(新潮社) ★★★★★★★☆☆☆
『村田エフェンディ滞土録』(角川書店) ★★★★★★★★☆☆
『沼地のある森を抜けて』(新潮社) ★★★★★★★☆☆☆
『すべてがFになる』(講談社文庫) ★★★★★★★★★☆
<森博嗣さん>
国立N大学工学部建築学科の教授で、専門は「粘塑性体の流動解析手法」
研究者・エンジニアの仕事のかたわら、作家としての仕事をこなしています。
1996年、『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。
それ以降、次々と傑作を書き上げ、もうすでに約100冊の著書があります。
もはや
日本を代表する超売れっ子作家のひとりとなりました。
この人の頭の中は一体どうなっているんだろう・・・と思わせてくれる作家さん。
<あらすじ>
『すべてがFになる』 孤島のハイテク研究所で少女時代から完全に
隔離された生活を送る天才工学博士、真賀田四季。彼女の部屋から
ウェディングドレスをまとい、両手両足を切断された死体が現れた。
偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が
この
不可思議な密室殺人に挑む。第1回メフィスト賞受賞作。
<感想>
この本を読んだとき、素直に「まいった・・・」と思いました。
技術点・芸術点ともに満点だと自信を持って言えます。
僕はそれほど本格ミステリ作品を読んでるわけではありませんが、
これを書いた人の頭の中はどうなってるんやろ・・・と感じてしまうほど
衝撃を受けたことを覚えています。
こんな密室トリックは後にも先にもないでしょう。
それに、密室トリックのネタだけが凄いわけではなく、作品の随所に
「やられた・・・」と唸らされるところがあります。
「あれが伏線だったのか・・・」と気付かされる度に、鳥肌が立つほどの
興奮をおぼえました。決して理系ミステリってわけではないので、
すべての人に読んで頂きたいです。
本格ミステリ史上に残る名作です。
<そのほかの作品>
『冷たい密室と博士たち』(講談社文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『封印再度』(講談社文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『今はもうない』(講談社文庫) ★★★★★★★★☆☆
『ナラタージュ』(角川書店) ★★★★☆☆☆☆☆☆
<島本理生さん>
1983年生まれで、現在、立教大学文学部在学中。
2001年、『シルエット』で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。
2003年、都立高校在学中に『リトル・バイ・リトル』が芥川賞候補となり
大きな話題となる。同年、第25回
野間文芸新人賞を最年少で受賞。
2004年、『生まれる森』がまたも芥川賞候補になる。
『ナラタージュ』は本の雑誌が選ぶ2005年度上半期ベスト10で1位、
キノべス2005でも7位にランクインするなど大健闘。
思春期の繊細な感情や心の痛みを鮮やかに表現し、10代・20代の
読者からの支持が高い作家さんです。
<あらすじ>
『ナラタージュ』 大学2年生の春、泉に高校の演劇部の顧問だった
葉山先生から電話がかかってくる。高校時代、片思いをしていた先生からの
電話に泉は思わずときめく。だが、用件は後輩のために卒業公演に参加して
くれないか、という誘いだった。
高校卒業時に打ち明けられた先生の過去の大きな秘密。抑えなくてはならない
気持ちとわかっていながら、一年ぶりに再会し、部活の練習を重ねるうちに
先生への想いが募っていく。
不器用だからこそ、ただ純粋で激しく狂おしい恋愛小説。
<感想>
「本の雑誌」のランキングはあてにならない、ということを改めて実感した
1冊でした。これが2005年上半期の1位だなんて・・・
評判がよく、期待しすぎたせいか、読み終わった後にがっかりしました。
でも、この人の文体はけっこう好きです。
真っ直ぐでピュアな感じがすごく
伝わってくる文体。透明感があってみずみずしい。
でも、悪く言えば「技巧性がない」って感じでしょうか・・・
誰にでも、恋愛において「一生忘れられない人」っている。そういう人とは
たいがい一緒になれなかったりする(ような気がする)。
新しい恋人ができて、その人のことを忘れてしまったと思ってたのに、ふとした
瞬間に生々しく思い出してしまうことってある。
そういう胸の痛みはごまかすことができず、延々とくり返してしまうもの。
主人公が感じている、壊れそうなほどに張りつめた気持ちに、すごく共感しながら
読みました。僕の趣味ではないけれど、
この小説を好きだという人はきっと
多いでしょう。10代・20代の方には特にウケがいい小説だと感じました。
<そのほかの作品>
『シルエット』(講談社文庫) ★★★★☆☆☆☆☆☆