*Books ログ1*


1人目  吉田修一(2005/07/31)
2人目  江國香織(2005/08/02)
3人目  大崎善生(2005/08/04)
4人目  綾辻行人(2005/08/05)
5人目  石田衣良(2005/08/06)
6人目  あさのあつこ(2005/08/08)
7人目  金城一紀(2005/08/11)
8人目  浅田次郎(2005/08/14)
9人目  恩田陸(2005/08/18)
10人目  小川洋子(2005/08/22)
11人目  乙一(2005/08/27)
12人目  我孫子武丸(2005/09/02)
13人目  白岩玄(2005/09/06)
14人目  川上弘美(2005/09/10)
15人目  枡野浩一(2005/09/14)
16人目  奥田英朗(2005/09/19)
17人目  角田光代(2005/09/24)
18人目  市川拓司(2005/09/28)
19人目  貴志祐介(2005/10/03)
20人目  京極夏彦(2005/10/08)


1人目  吉田修一


『最後の息子』(文春文庫) ★★★★★★★★★☆


<吉田修一さん>
記念すべき一人目の Favorite Novelist は、吉田修一さんです。言わずと知れたゲイの作家さん
デビュー作の『最後の息子』をはじめとして、登場人物にゲイが出てくる小説を
結構たくさん書いています。この『最後の息子』も芥川賞候補になりますが、
残念ながら落選しました。でも、その5年後に『パーク・ライフ』で見事芥川賞を獲りました。
最初は純文学のイメージが強かった人ですが、最近は恋愛小説ばっかり書いてる
印象があります。『東京湾景』がテレビドラマ化されたんで、知ってる人も多いかもしれません。


<あらすじ>
『最後の息子』 新宿二丁目にお店を持つオカマの「閻魔」ちゃんと同棲している
主人公(ぼく)のお話です。計算ずくめで、姑息な愛され方が上手い「ぼく」
そんな「ぼく」が求めているのは、愛でもなくて金でもなくて、何もしないでいい時間。
モラトリアムな日々を送る「ぼく」と閻魔ちゃんを描いた作品。第84回文学界新人賞受賞作。


<感想>
無駄な文が一文もない、完璧な短編小説だと思います。
最初の2ページくらいを読み始めると、止まらなくなります。
小説の作り、台詞のセンス、主人公の内面の描き方など、どれをとっても素晴らしい出来です。
タイトルである「最後の息子」とはどういう意味なのか? 冒頭部分、主人公はなぜビデオ日記の
映像を見直していたのか? そんな謎もラストの部分で全部すっきり解決します。
作品の中に出てくる「ホモ狩り」など、すごく考えさせられる部分も多かったです。
ラストの部分が特に考えさせられたし、印象深いです。最後の部分を読むと、
ほんと上手い作りの小説やな、と思わされます。つくりの上手い小説ってたいがい読みにくくて
わかりづらいんですが、そうならなかったところがいいです。
『最後の息子』に併録されている、長崎の高校水泳部員たちを爽やかに描いた『Water』という
作品もかなりオススメです。部員の中にやっぱりゲイの男の子が出てきます。
僕は「最後の息子」よりも「Water」の方が個人的に好きです。
日本一の青春小説。絶対に読んで損はないはずです!


<そのほかの作品>
『熱帯魚』(文春文庫)      ★★★★★★★★☆☆
『パーク・ライフ』(文春文庫)  ★★★★☆☆☆☆☆☆
『パレード』(幻冬舎文庫)    ★★★★★★★★★☆
『日曜日たち』(講談社文庫)  ★★★★★★★☆☆☆
『長崎乱楽坂』(新潮文庫)   ★★★★★★★☆☆☆
『ランドマーク』(講談社文庫)  ★★★★★★☆☆☆☆
『悪人』(朝日新聞社)      ★★★★★★★★★☆


2人目  江國香織


『きらきらひかる』(新潮文庫) ★★★★★★★★★☆


<江國香織さん>
2人目は江國香織さん。僕の中では、恋愛小説といえばこの人だというイメージがあります。
女性作家さんはたくさんいますが、山田詠美さん、川上弘美さん、小川洋子さん、
そして江國香織さんの4人は、ずば抜けて素晴らしい小説を書く方だと感じます。
坪田譲治文学賞、路傍の石文学賞、紫式部文学賞、山本周五郎賞、フェミナ賞、
そして2004年にはついに直木賞も受賞されました。
ベタな恋愛小説ではなく、味わい深く、ぐいぐい読ませる文章とふわふわした感じで、
読者を魅了します。「恋愛小説は苦手だ」という人にもオススメできます。


<あらすじ>
『きらきらひかる』 十日前に結婚した笑子と睦月。でも、彼らの結婚生活を説明するのは難しい。
笑子はアル中で、睦月はゲイで恋人がいる。すべてを許しあって結婚したはずなのだが…。
笑子と睦月と彼の恋人紺くんの3人の物語。恋愛小説の王道です。紫式部文学賞受賞作。


<感想>
とにかく大好きな小説です。何度も読み返してしまうくらい好きです。
笑子も睦月も紺くんもみんな大好きです。
「愛」ってなんですか? って聞かれたらみなさんはどう答えますか? 
愛にもいっぱい種類があるから一概には言えないけど。家族愛とか友情とか恋愛感情とか・・・。
でも、そんな「枠」にはまりきらない「愛」だってきっとあるはず。
LOVEでもLIKEでもない感情だってあるはず。江國さんのすごいところは、
そんな既存のコトバでは表現できない「愛」のカタチを物語として提示できるところです。
特に女の子はこの小説を好きだという人が多いです。
それと、ゲイの登場人物をすごくナチュラルに描けてるなと感じました。是非ご一読を!


<そのほかの作品>
『神様のボート』(新潮文庫)          ★★★★★★★☆☆☆
『ホリーガーデン』(新潮文庫)         ★★★★☆☆☆☆☆☆
『号泣する準備はできていた』(新潮社)  ★★☆☆☆☆☆☆☆☆


3人目  大崎善生


『パイロットフィッシュ』(角川文庫) ★★★★★★★★★☆


<大崎善生さん>
三人目はこの人です。ノンフィクションの世界から小説の世界へ転進し、
今もなお進化し続ける48歳です。『パイロットフィッシュ』が角川文庫のロングセラーとなり、
一昨年くらいから上昇気流に乗り、突如ブレイクしました。
『聖の青春』でデビューした頃は、失礼ながらここまで凄い小説を書くとは想像できませんでした。
今後も要注目の作家さんです。


<あらすじ>
『パイロットフィッシュ』 アダルト雑誌の編集部に勤める山崎、40歳。
ある日突然かかってきた電話は、19年ぶりに声を聞く由希子からだった。
過去を回想する形で進んでいく物語。徐々に物語の輪郭が浮き出てくる。
由希子との出会い、エピソード、昔世話になったバーのマスターやかつて上司だった
編集長の沢井との出来事、そして沢井の死・・・。過去と現在が並行して進んでいく。
その中で、「出会う」とは何か、「別れる」とは何かを、透明感とユーモアある文体で
丁寧に描ききった名作。吉川英治文学新人賞受賞作。


<感想>
人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない――
これがこの小説の主題となる部分でしょうか。とにかくおもしろいです。
パーフェクトな小説だと思います。
抽象的な言い方になるけれど、小説を書くことで「答え」を出そうとしていないところが
いいなと感じました。哲学でも文学でもそうですが、行き着く先に「答え」はありません。
その思考(執筆)のプロセス自体が一種の「答え」に近いものなんだと感じています。
この小説においても、一つ一つのエピソードを積み重ねていくことで、小説の全体像が
見えてくる作りになっています。だから、一言でこの小説の良さを語ることはできません。
この小説の全部を読んで、はじめてこの小説の良さがわかるはずです。
文句なしの名作です!


<そのほかの作品>
『アジアンタムブルー』(角川文庫)       ★★★★★☆☆☆☆☆
『孤独か、それに等しいもの』(角川書店)  ★★★★★☆☆☆☆☆
『九月の四分の一』(新潮文庫)        ★★★★★★★☆☆☆


4人目  綾辻行人


『十角館の殺人』(講談社文庫) ★★★★★★★★☆☆


<綾辻行人さん>
四人目はミステリ作家さんです。本格ミステリを書いてる人です。本格ミステリというのは、
俗に言う「トリック」が使われた推理小説で、読者の予想を超えるような意外性とフェアな
伏線の張り方が求められます(←あくまで僕が考える「本格ミステリ」の定義です)。
この人は、長らく続いた「社会派ミステリブーム」に終止符を打ち、「新本格派」というジャンルを
切り開いた
偉大な方です。『屍鬼』や『十二国記』で知られる小野不由美さんと結婚しておられます。


<あらすじ>
『十角館の殺人』 「新本格派」というジャンルを切り開いた記念碑的な名作。
半年前に凄惨な四重殺人が起こった九州の離れ小島に、大学のミステリ研究会の7人が
訪れるところから物語は始まる。島に建つ十角形の建物「十角館」で起こる連続殺人の罠。
一人一人死んでいく仲間。一体犯人は誰なのか? 驚天動地の大胆すぎるトリック
予測不可能などんでん返し。本格ミステリの入門書です。


<感想>
中学2年の夏休みにたまたま本屋で見つけたこの本を読み、本格ミステリの虜になりました。
たった一行で物語を180度ひっくり返してしまう、あのトリックとどんでん返しに眩暈がするほどの
興奮を覚えた若かりし頃・・・。きのうのように思い出せます。この先はどうなるんだろう? 
なんて考えながらページを繰る手が止まらないこと間違いなし。
外部との連絡がいっさい取れない「嵐の山荘」と言われる設定の中で、次々に殺されていきます。
館の雰囲気もドキドキ感を高めてくれます。まさかの犯人の正体に愕然とするはずです。


<そのほかの作品>
『迷路館の殺人』(講談社文庫)     ★★★★★★★★☆☆
『人形館の殺人』(講談社文庫)     ★★★☆☆☆☆☆☆☆
『時計館の殺人』(講談社文庫)     ★★★★★★★★☆☆
『どんどん橋、落ちた』(講談社文庫)  ★★☆☆☆☆☆☆☆☆
『霧越邸殺人事件』(新潮文庫)     ★★★★★★★☆☆☆
『殺人鬼』(新潮文庫)           ★★★★★☆☆☆☆☆


5人目  石田衣良


『娼年』(集英社文庫) ★★★★★★★★☆☆


<石田衣良さん>
五人目は石田衣良さんです。現代の風俗をうまく描くことで定評のある方ですが、最近のJ文学に
特有のポップな感じだけでは終わっていません。軽快ではあるけれど軽薄ではない
その内容には、今の日本をしっかり捉えているなと感心させられます。
文章力や緻密な情景描写にはあまりこだわらず、ストーリー展開でグイグイ物語を引っ張っていく
エンターテイメント性の強い作品を書く作家さんだと感じます。
『娼年』は残念ながら直木賞落選となりましたが、2003年に『4TEEN』で直木賞を受賞しました。
ちなみに、『4TEEN』にはゲイの男の子が登場する章があります。


<あらすじ>
『娼年』 恋愛にも大学生活にも退屈していた森中領、二十歳。
とあるきっかけから、「娼夫」の仕事をするようになる。様々な性癖を持つ女の人に自分の体を
売る仕事。様々な女性の中に潜む様々な欲望とその不思議さに魅せられていく。


<感想>
今や人気絶頂の石田衣良さんですが、「IWGP」シリーズよりも、「4TEEN」よりも、
この作品の方が完成度も高く、深い物語だと感じます。体を重ねることで見えてくる
「相手のさびしさ」を否定もせず、肯定もせず、「今のままでいいんだよ」とやさしく包み込む
主人公の姿に感動しました。セックスを通じて、自他のさびしさを見つめる。
そして、人の奥深くに眠る欲望の真実を見つけ出す。やさしさを感じる物語でした。
最初の一行がとても魅力的な作品です。姫野カオルコさんによる文庫版の解説が、
この作品を的確に捉えているので、初読の方は後ろの解説から読むといいかもしれません。


<そのほかの作品>
『池袋ウエストゲートパーク』(文春文庫)   ★★★★★★☆☆☆☆
『4TEEN』(新潮社)                ★★★★★★★★☆☆
『1ポンドの悲しみ』(集英社)          ★★★☆☆☆☆☆☆☆


6人目  あさのあつこ


『バッテリー』(角川文庫) ★★★★★★☆☆☆☆


<あさのあつこさん>
児童文学(ヤングアダルト)作家の頂点に君臨するのが、
このあさのあつこさんと森絵都さんのお二人です。
あと、湯本香樹実さんや梨木香歩さん、佐藤多佳子さん、笹生陽子さんなども
良質な児童文学作品を書くことで知られています。
読書体験において、「同時代性」というものは意味を成さないと僕は信じ込んでいます。
つまり、児童文学は子どもが読むもの、青春小説は中高生が読むものという考えは
正しくないということです。読む時期によってその作品の捉え方は変化するし、
「同時代」という枠を抜けきらない限り、その時代を客観的に見ることは困難だと思うからです。
だから、児童文学も、大人にしかわからない「あぁ、なるほど」と感じる点が必ずあります。
そういったところを上手く描くからこそ、あさのあつこさんや森絵都さんは
大人の読者層からも評価されているんだと思います。
もしかすると近い将来、あさのさんや森さん、梨木さんが直木賞を獲ることが
あるかもしれないなと密かに期待しています。


<あらすじ>
『バッテリー』  児童書というジャンルを超え、大人も子どもも夢中にさせた話題の傑作
原田巧。中学1年生にして脅威的な才能の片鱗を見せる天才ピッチャー。
自分の才能に絶大な自信を持つがゆえに、他に対して時に冷酷な態度を見せる。
転校先の地方都市で出会った永倉豪は巧にバッテリーを組むことを志願する。
キャッチャーの豪や、病弱で体の弱い弟の青波、大の野球嫌いの母、
元高校野球の名監督である祖父など、様々な人との関わりの中で成長していく
巧を描いた児童文学の傑作。


<感想>
児童書というだけでこの本を手に取らない大人は不幸だと思う。
自らの自信に値する能力と才能を持ち、ストイックなまでに野球に打ち込む巧。
だからこそ他人には興味がないし、他人に自分を分かってもらおうなんて思いもしない。
自分が一番だと思ってる奴なんて、僕は大嫌いだけど、
なぜか巧のことが嫌いにはなれなかった。
病弱な弟青波に対してみせるやさしさなどが時に感じられたからかもしれない。
転校をきっかけに、巧はいろんな人と出会い、自身の考え方についても
少しずつ変わっていく。その過程が詳細に書かれていて、
読者を一気に「あさのワールド」に引き込みます。
チーム一丸、汗水流して協力し合って、時に喧嘩もしながら、
最後には試合に勝ってみんなで涙を流す。的な「スポ根」ではない。
そんなのは今までにも腐るほどあったから面白くもなんともない。
人が感動を覚えるのは、何事かをきっかけに「人が変わろうとする瞬間」を
目の当たりにした時だと僕は思う。
「変化」のあるところに「感動」が生まれるんだと思う。
巧の心情の変化や、依然として変わらない信念めいたものが
実にうまく書かれています。間違いなく児童文学の傑作です。


7人目  金城一紀


『GO』(講談社文庫) ★★★★★★★★☆☆


<金城一紀さん>
『GO』の直木賞受賞&映画化で一躍有名になり、今年は『FLY,DADDY,FLY』の映画化、
さらには久々の新刊も出され、絶好調の金城一紀さん。著者自身が在日コリアンであるためか、
この人の作品には必ずといっていいほど在日の登場人物が出てきます。
テンポの良さとユーモアある語り口が魅力的で、漫画のようなノリで読めてしまいます。
本を読むのが嫌いだという人には是非オススメしたい作家さんです。


<あらすじ>
『GO』 日本で生まれ、日本で育ったのに「在日」と呼ばれる僕。「僕はいったい何者なんだろう」 
元ボクサーの親父に鍛えられて、これまで喧嘩23戦無敗。そんなある日僕は恋に落ちる。
相手はとても可愛らしい日本人だった。軽快なテンポで書かれた青春小説。
笑えて、泣けて、考えさせられる、第123回直木賞受賞作。


<感想>
とにかく笑えます。そして考えさせられます。「在日」という問題を笑いとユーモアを交えて
書ききったところにこの小説の良さがある
のではないでしょうか。
主人公が在日であることに悩み苦しむ様子も書かれているのに、作品全体からは
暗くて、重い印象はまったく受けません。それは一人一人の登場人物が生き生き描かれていて、
とても前向きに楽しく生きているからなんでしょう。とにかく笑いどころ満載の小説です。
特に若い世代の人に読んでもらいたい小説です。
そして、この小説が差別や国境を一蹴してくれればいいのにな、と感じました。


<そのほかの作品>
『レヴォリューションNo.3』(講談社)   ★★★☆☆☆☆☆☆☆
『FLY,DADDY,FLY』(講談社)      ★★★★☆☆☆☆☆☆
『対話篇』(講談社)            ★★★★★★☆☆☆☆


8人目  浅田次郎


『天国までの百マイル』(朝日文庫) ★★★★★★★★★☆


<浅田次郎さん>
平成の泣かせ屋」こと浅田次郎さんです。どの作品を読んでも涙が出てきてしまう、
そんな小説を書く人です。『蒼穹の昴』を出した頃から評価がぐっと上がり、
『鉄道員』で直木賞を受賞してからの活躍はご承知のとおりです。
とにかく人物の描き方と台詞の書き方が上手すぎます。個人的に、女性の描き方は
少し下手だなと感じてたりもしますが・・・。
とにかく感動できる小説が読みたい人にはうってつけの作家さんです。


<あらすじ>
『天国までの百マイル』 バブル崩壊により会社も金も妻子も失った中年男、城所安男。
その名のとおり、安い男に成り下がってしまい、生きることに何の希望も持てなくなった。
そんな彼を変えたのは母の病気だった。心臓病を患う母を救うため、天才心臓外科医がいる
サン・マルコ病院を目指し、奇跡を信じておんぼろワゴンでひた走る
親子の切ない情愛を描いた傑作。


<感想>
この小説を読んで泣けない人は不感症である、と言い切れるほど素晴しい小説です。
僕は号泣してしまった…。これは読まないと後悔します。登場人物全員が魅力的です。
特にドクター曽我のかっこよさには脱帽です。この小説を読んでいると、人として大切なものって
何なんだろうって思ってしまう。人を思いやること、人を無条件に愛することなのかな…。
でも、そんなものはお金や地位や名声を得た瞬間に、無意識に忘れ去ってしまうものなんじゃ
ないのかな…。なんて考えてしまった。
浅田次郎さんの小説はとにかく読みやすくて、わかりやすい。
なんといっても文章のリズムがいい。ストーリーも単純明快。そして、泣ける。
みなさん、是非読んでください。


<そのほかの作品>
『地下鉄(メトロ)に乗って』(講談社文庫)   ★★★★★★☆☆☆☆
『鉄道員(ぽっぽや)』(集英社文庫)      ★★★★★★★★☆☆
『壬生義士伝』(文春文庫)            ★★★★★★★☆☆☆
『月のしずく』(文春文庫)             ★★★★★☆☆☆☆☆


9人目  恩田陸


『夜のピクニック』(新潮社) ★★★★★★☆☆☆☆


<恩田陸さん>
『六番目の小夜子』でデビューし、ホラー、SF、ファンタジーと多彩なジャンルの作品を書き、
幅広い読者層から評価され続けている
方です。なかなか大きい賞とは縁のなかった方ですが、
今年の春に『夜のピクニック』で第2回本屋大賞と、吉川英治文学新人賞をW受賞し
大ブレイク(再ブレイク?)しました。


<あらすじ>
『夜のピクニック』 主人公たちの通う高校の伝統行事「歩行祭」。
80キロもの距離を夜通し歩くという行事。
それぞれに仲のいい子や思いを寄せる子と一緒に歩いたりしながら、
高校生活最後の思い出を作る行事。貴子はこの歩行祭に賭けていた。
今までみんなに隠してきた秘密。融への気持ち。歩行祭の間に全部清算してしまおうと――。
本屋大賞&吉川栄治文学新人賞ダブル受賞。


<感想>
もっと青春しておけばよかった。この小説を読んでそう感じた。
そして、高校時代に帰りたいなと心から感じた。この作品にはぎっしりと「青春」がつまって
います。現役高校生ではなく、中年のおばちゃんやおじちゃんにも読んでもらいたいなと思う。
気持ちだけでも若返るはず。
忍の言うとおり、「雑音」を聞くことはやはり必要だと感じる。主旋律ばかりに耳をとられ、
どうでもいい雑音を聞き捨てていると、ほんとに厚みのない単色の人生になってしまうに違いない。
その時には必要がないと感じた些細なことが、光りだして、
その人自身に何事かを与えるようになるには多くの「時間」がかかるのだろう。
そして、そういった「雑音」を丁寧に拾い取ってきた人たちは、僕のようにこの作品を読んで
「高校時代に帰りたい」とは思わないはずだ。
あとから、ああしておけばよかった、こうしておけばよかったなんて言ったって遅いんですね。
そのときにすべきこと、したいことを精一杯する。がむしゃらにする。それが「青春」なのかな。
読後感がすばらしくよく、久々に「本」を読んだなって感じがしました。


<そのほかの作品>
『六番目の小夜子』(新潮文庫)  ★★★★★★☆☆☆☆
『ネバーランド』(集英社文庫)   ★★★★★★★☆☆☆


10人目  小川洋子


『博士の愛した数式』(新潮社) ★★★★★★★★★★


<小川洋子さん>
本作で第1回本屋大賞を受賞し、大ブレイクを果たす以前から大好きだった小川洋子さん。
ブレイクし、ベストセラー作家になったことは嬉しいんですが、ちょっと悔しい気持ちもあります。
僕だけの小川洋子だと思っていたので・・・。
硬質な文章と「喪失感」の描き方が抜群に上手い、超技巧派の作家さん
川上弘美さん曰く、「小川ワールドは失われたものたちの世界」なんだそうです。
たしかに、失われたもののなすすべのない哀しみがどの作品でも丁寧に書かれています
読後、必ず心に何かが残る、そんな作品を書いています。


<あらすじ>
『博士の愛した数式』 80分しか記憶がもたない老いた数学者「博士」と、
その雇われ家政婦の「私」と、私の息子である、小学生でタイガースファンの「ルート」。
この3人の心温まる交流の物語です。80分で記憶がリセットされてしまうため、
毎朝「はじめまして」を繰り返す彼ら。その彼らをつなぐものが数式だった。
第1回本屋大賞受賞作。全人類必読の名作


<感想>
人に自信を持って薦められる本って結構少ない。でも、この本は自信を持って薦めます
「僕の記憶は80分しかもたない」 この言葉が読むにつれて少しずつ心にのしかかってくる。
博士の愛したものは「数式」と「子ども」。ありったけの愛でもってルートを包み込む博士の姿に、
そんな博士の気持ちに応えようとする私とルートに、静かに涙を流しました。
作中にでてくる数式の凛とした佇まいが、さらにこの作品の浮世離れした雰囲気を
際立たせています。間違いなく2004年のベストです。そして、僕の人生におけるベストです
今一番売れている本をお勧めするのは悔しいです。
でも、絶対に「読んでよかった」と思える小説です。
数学が嫌いな人やタイガースファンじゃない人も絶対に読んでみてください。


<そのほかの作品>
『完璧な病室』(中公文庫)          ★★★★★★★☆☆☆
『薬指の標本』(新潮文庫)          ★★★★★★★★☆☆
『偶然の祝福』(角川文庫)          ★★★★★★★★☆☆
『ブラフマンの埋葬』(講談社)        ★★★★★★★☆☆☆
『まぶた』(新潮文庫)             ★★★★★★★★★☆
『寡黙な死骸、みだらな弔い』(中公文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『ミーナの行進』(中央公論新社)      ★★★★☆☆☆☆☆☆


11人目  乙一


『君にしか聞こえない―CALLING YOU』(角川スニーカー文庫)
★★★★★★★☆☆☆


<乙一さん>
「天才」と呼ばれる作家さんはなかなかいません。
でも、この作家さんには「天才」という言葉がぴったり似合います
16歳のときに書いた『夏と花火と私の死体』でデビューしました。
乙一さんは、ホラー系の作品(黒乙一)とイタセツナ系の作品(白乙一)を主に書いています。
どちらの作品もストーリー展開の意外性は凄まじいです。ミステリとしての評価もかなり高い作品を
書いています。『GOTH』で第3回本格ミステリ大賞を受賞しています。
乙一通ならご存知のとおり、「あとがき」がいつも面白いです。


<あらすじ>
『君にしか聞こえない』 表題作のほか、2編を収録した珠玉の短編集。
クラスの中で唯一ケイタイを持っていない女子高生のリョウ。常にクラスではひとりぼっちだった。
友達だっていなかった。いつも友達とつながっている幸福なクラスメイトたちに憧れていた。
そんな時、妄想で頭の中に携帯電話を作り出してしまう。鳴るはずのない空想の世界の電話。
しかしある時、その携帯電話から美しい音が流れ出した。
それは世界のどこかで、リョウと同じさみしさを抱える少年からのSOSだった…。


<感想>
ホラー系乙一しか読んだことのなかった僕に、バイト先の女の子がこの本を紹介してくれました。
日本文学科で「小川洋子」をテーマに卒論を書いている彼女の言うことなら、
信用してみてもいいだろうと思い読み始めました。結果は大当たりでした。
黒乙一と同様にストーリー展開の意外性は凄まじいです。やはり、先の読めない小説を
書かせたら、日本ではこの人の右に出るものはいない
な、と再認識させられました。
そして、「せつなさ」のおまけつきで、涙をそそられました。乙一って泣けるんや…
と新たな発見をしました。併録されている『華歌』は、ミステリとしてかなり
評価できる作品だと感じます。特に女の子にはウケのいい小説だと思います。


<そのほかの作品>
『夏と花火と私の死体』(集英社文庫)     ★★★★★☆☆☆☆☆
『暗黒童話』(集英社文庫)            ★★★★★★★☆☆☆
『さみしさの周波数』(角川スニーカー文庫)  ★★★★★★☆☆☆☆
『GOTH』(角川文庫)               ★★★★★★☆☆☆☆
『ZOO』(集英社)                  ★★★★★★★☆☆☆


12人目  我孫子武丸


『殺戮にいたる病』(講談社文庫) ★★★★★☆☆☆☆☆


<我孫子武丸さん>
本格ミステリ作家さんです。綾辻行人さんと同じく京都大学のミス研出身のはずです。
綾辻行人さん、法月綸太郎さんに続いて登場した新本格の作家さんです。
本作では、叙述トリック(文章の構成で読者を騙す仕掛け)と呼ばれる大技のテクスト・トリック
使っています。複雑に小さなトリックを組み合わせてしまうと、謎解きの段になって、
カタルシスが水増しされる危険性があるけれど、この作品のように
潔く大技1本で勝負した作品
は、わかりやすい上に衝撃度が高いので、
ミステリ初心者向きかもしれません。


<あらすじ>
『殺戮にいたる病』 東京の繁華街を舞台に繰り広げられる悲劇。
猟奇的殺人を重ねるサイコキラー、蒲生稔。陵辱の果ての惨殺を繰り返す
蒲生稔の真の正体とは…。冒頭からラストシーンまで、身も凍るような惨殺シーンの連続。
殺人者の行動を丹念に描ききった問題作。猟奇的ホラー作品でありながら、
本格ミステリとしての評価も高い作品。


<感想>
ホラーが苦手な人は絶対に読まないでください。ココロがヤラれます。とにかくグロいので。
最初読んでるうちは吐き気がして耐えられなかったんですが、ラストの6行を読んだ瞬間、
頭の中は「???」
になってしまった。理解できなかったので、もう一度最初から読み直すと…。
自分がとんでもない思い違いをしていることに気づきました。そして、鳥肌がたった。
凄すぎます。こんなにまんまと騙されるとは…。えげつない惨殺シーンに気を取られすぎて、
著者のトリックにまんまとハマッてしまった。伏線も十分にあったんですが、
ほんとにまさかです…。本格ミステリファンには受けのいい作品だと思います。


13人目  白岩玄


『野ブタ。をプロデュース』(河出書房新社) ★★★★★★★☆☆☆


<白岩玄さん>
1983年生まれで僕と同い年の作家さん。けっこうカッコいい感じの人です。
本作で文藝賞を受賞してデビューし、同じ作品で芥川賞候補にもなりました。
しかし、僅差で阿部和重さんの『グランド・フィナーレ』に敗れました。
僕は基本的に新人のデビュー作はあまり読まないんですが、この「文藝賞」と
「群像文学新人賞」の受賞作には一応目を通すようにはしています。
数多い新人賞の中でも当たりの出る確率が高いのが、この二つの新人賞だからです。
もちろん白岩玄さんも大当たりでした。嫉妬したくなるような才能の持ち主です。


<あらすじ>
『野ブタ。をプロデュース』 とある高校がこの小説の舞台。主人公、桐谷修二は
かっこよくて、モテモテでクラスの中心人物。誰からも慕われている存在。
しかし、彼自身はただ着ぐるみをかぶってショーを演じているに過ぎない
そんな彼のクラスに、見るからにイケてない、元イジメられっ子の信田くんが
転校してくる。修二は信田をプロデュースし、人気者にしようと企てるが…
文藝賞受賞作。今秋ドラマ化決定。


<感想>
さほど期待せずに読んだせいか、かなり面白かったです!
「interest」じゃなくて「funny」です。久々に小説で笑いました。
めちゃくちゃ面白いんですが、そこには「怖さ」みたいなものも感じさせられます。
「桐谷修二」という着ぐるみをかぶり、自分を演じ続ける主人公に
少し共感できるところもありました。
自分を演じ続けていると、「演じている自分」と「本当の自分」の区別が
つかなくなってきて、どうしようもなくなったりするものです。
小説の半ばで、修二は「本当の自分」に向き合わないといけなくなります。
でも、結局最後は「自分をプロデュース」して再起を図るという結末になる。
このラストについては賛否両論なんでしょうが、
着ぐるみを脱いでリスタートという結末じゃなくてよかったな、
と僕自身は思っています。
着ぐるみを脱いだ修二は、修二ではないような気がするし、
作者自身「着ぐるみを脱いだ修二」がどんな人物かわからなかったんじゃないでしょうか。
この小説から僕が感じたこと。それは、自分の発したコトバが本当であれ嘘であれ、
相手に届いた結果が「真実」となる
ということ。
軽いノリの小説なのに読み応えがありました。活字嫌いの人にもオススメです!


14人目  川上弘美


『センセイの鞄』(文春文庫) ★★★★★★☆☆☆☆


<川上弘美さん>
数々の文学賞を受賞しまくっている川上弘美さん。
芥川賞、ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞、伊藤整文学賞、女流文学賞、谷崎潤一郎賞などです。
実は川上弘美さんの小説はそんなにたくさん読んでいないので、詳しい解説は書けません。
『ニシノユキヒコの恋と冒険』や『光ってみえるもの、あれは』などが面白いらしいので
近いうちに読んでおこうと思っています。


<あらすじ>
『センセイの鞄』 高校時代の国語の先生に、駅前の居酒屋で偶然に再会したツキコさん。
それ以来、すっかり「センセイ」と仲良くなり、お酒を飲みにいったり、キノコ狩りに行ったり、
お花見に行ったりするようになる。年の差を越えたセンセイとの恋
しかし、センセイと過ごした日々にも終わりが来て…。
とても切ないけれど、読後にやさしい気持ちが込み上げてくる。谷崎潤一郎賞受賞作。


<感想>
本屋で本を見ているだけで、「この本は自分のツボにはまるかも」とか
「この本は自分には合わないだろう」なんて思うんですが、その勘はだいたい当たります。
この本を見つけたとき、絶対この本は自分の好みだと感じたんですけど、
珍しくその勘は当たりませんでした。でも、自分のツボにはまらなかったというだけで、
この小説を好きだという人は多いだろうなと思いました。
歳の離れた人と付き合っていくということは、相手が先に死に、自分が取り残される可能性が
高いということ。とても切ない。でも、僕は愛する人より先に死にたくない。
取り残されてもいいから、愛する人の最期を看取りたい。
そして、悲劇のヒロイン?気取りで泣き続ける自分に酔ってみたいと思います。
とてもわかりやすい文章なので読みやすいです。女性受けする作品かもしれません。
そして、この小説(というか川上作品)の醍醐味は、なんといっても「日本語の美しさ」です。
特に「ひらがな」と「カタカナ」の使い方が素晴らしく、視覚的にも優れた作品だと僕は思います。
『先生のカバン』ではなく『センセイの鞄』 この字面の良さがとてもイイです。
これはなんとなくですが、この小説の最後の一文が個人的にはものすごく好きです。
あえてここでは紹介しないので、気になった方は本屋さんで立ち読みしてみてください。


<そのほかの作品>
『おめでとう』(新潮文庫)          ★★★★★★☆☆☆☆
『溺レる』(文春文庫)             ★★★★★★★☆☆☆
『ニシノユキヒコの恋と冒険』(新潮文庫) ★★★★★★★★☆☆


15人目  枡野浩一


『57577(Go city , go city , city)』(角川文庫) ★★★★★★★★☆☆


<枡野浩一さん>
現代短歌と言えばこの人。若年者層から絶大な支持を集めている現代歌人。
誰が読んでも絶対ハマることうけあいのヤバイ短歌集を次々に出しておられます。
デビュー短歌集『てのりくじら』のロングセラーで一躍有名になり、
NHKの『スタジオパークからこんにちは』等での授業が大反響をよびました。
増刷を重ねる短歌入門書『かんたん短歌の作り方』(筑摩書房)がきっかけで、
加藤千恵、佐藤真由美、脇川飛鳥などが歌人デビューしています。
現在、「週刊朝日」「毎日新聞」「朝日新聞」ほかで連載中。


<感想>
感想も特に書く必要はなく、とにかく読んでくれれば誰でも100%ハマります
短歌なので、小説を読むのと違って気軽に手にできるのもいいです。
『57577』に出てくる有名な短歌をふたつ紹介します。

1、「好きだった雨、雨だったあのころの日々、あのころの日々だった君」

ステキな詩でありながら、実はちゃんと五七五七七になってるのが凄い↓
「好きだった、雨雨だった、あのころの、日々あのころの、日々だった君」

2、「かなしみは だれのものでも ありがちで ありふれていて おもしろくない」

そこまで言うかって感じやけど、全くの図星です。僕はこの短歌が一番好きです。
他にもたくさんの名作を残しておられるので、是非ご一読を!


<そのほかの作品>
『てのりくじら』(実業之日本社)            ★★★★★★★☆☆☆
『ドレミふぁんくしょんドロップ』(実業之日本社)  ★★★★★★☆☆☆☆
『ハッピーロンリーウォーリーソング』(角川文庫) ★★★★★★★☆☆☆
『君の鳥は歌を歌える』(マガジンハウス)     ★★★★★★☆☆☆☆
『かなしーおもちゃ』(インフォバーン)        ★★★★★☆☆☆☆☆


16人目  奥田英朗


『空中ブランコ』(文藝春秋) ★★★★☆☆☆☆☆☆


<奥田英朗さん>
『最悪』や『邪魔』で頭角を現した作家さん。『邪魔』では第4回大藪春彦賞を
受賞しました。『イン・ザ・プール』、『マドンナ』と連続して直木賞候補になるが
惜しくも落選。昨年、ようやく『空中ブランコ』で第131回直木賞を受賞しました。


<あらすじ>
『空中ブランコ』 急に空中ブランコが飛べなくなったサーカス団のエース。
先端恐怖症のやくざ。1塁への送球が必ず暴投になってしまう三塁手。
そんな彼らが行き着く先は、トンデモ精神科医「伊良部」のもとだった。
伊良部の施すトンデモ治療は計算ずくなのか、天然なのか…。
こんな精神科医が現実にいたら本当に怖い。どっちが患者かわからない。
第131回直木賞受賞作。


<感想>
肩肘張らず読める本です。すらすら読めるし、とても笑える。
トンデモ精神科医伊良部の言動はどれもこれも予測不可能。本当にとんでもない
無茶な治療ばかりするが、最後にはすべて解決してしまう。そして、ほんとにナイスキャラです。
Fカップ看護婦のマユミもかなりパンチ効いててステキです。
でも、「インザプール」の時ほど衝撃はなかったかな…。
ともあれこの作品、ほんとに奥田さんが書いたんだろうか?? 
「最悪」や「邪魔」とは全く違う作風なんですが…。
それに、この作品が直木賞とるってどうなんだろう・・・と個人的には思っています。


<そのほかの作品>
『最悪』(講談社文庫)       ★★★★★★☆☆☆☆
『イン・ザ・プール』(文藝春秋)  ★★★★★☆☆☆☆☆


17人目  角田光代


『キッドナップ・ツアー』(新潮文庫) ★★★★★★☆☆☆☆


<角田光代さん>
女性の読者から厚い支持を受けている作家さん。『対岸の彼女』で直木賞を受賞し、
さらに読者層を広げました。野間文芸新人賞、坪田譲治文学賞、路傍の石文学賞など、
受賞した賞も多数にわたる。


<あらすじ>
『キッドナップ・ツアー』 主人公は5年生の女の子ハル。夏休みの第1日目に誘拐されてしまう。
その犯人は2ヶ月前から家にいなくなっていたお父さんだった。だらしなくて、情けなくて、
お金もない、そんなお父さんと、ちょっとクールな女の子ハル。そんな父娘のひと夏の冒険譚。
ハルの夏休みは一体どうなってしまうのか。大人のための児童文学です。


<感想>
難しい年頃の女の子とだらしない父親。この二人の少しぎこちない会話や距離感などが
丁寧に書かれていて、思わず「わかる、わかる」と頷いてしまいます。
人の微細な心の動きや表現しづらい感情なんかをうまくコトバにしてくれるのが
角田光代さんの小説です。この小説でも、ハルの気持ちの変化がうまく書かれていました。
ハルが最後にお父さんに向かって、「もっと逃げ続けよう」って言い出す場面で
少し泣きそうになりました。ずっとお父さんといたいって気持ちがひしひし伝わってきました。
できれば角田さんには、この小説の続編を書いてほしいな、なんて思ってしまいました。
10年後、20歳になったハルを、相変わらずろくでなしのお父さんが誘拐しにくる
という設定でどうでしょうか。娘を持つ男性にオススメの小説です。


<そのほかの作品>
『まどろむ夜のUFO』(講談社文庫) ★★★★★★☆☆☆☆
『空中庭園』(講談社文庫)       ★★★★★★☆☆☆☆
『ロック母』(講談社)          ★★★★★☆☆☆☆☆


18人目  市川拓司


『いま、会いにゆきます』(小学館) ★★★★★★☆☆☆☆


<市川拓司さん>
本作が映画化されロングセラーとなり、今や超売れっ子作家さんになりました。
1997年からインターネット上に小説を発表しだし、2002年に『Separation』を
上梓し、これがドラマ化されたことから一躍有名になりました。
2005年には『そのときは彼によろしく』が第2回本屋大賞の10位にランクインし、
人気だけではない実力の部分を見せつけました。


<あらすじ>
『いま、会いにゆきます』 「来年の6月、雨の降る頃に会いに来る
そう言い遺して死んだ「澪」。「巧」と「佑司」は最愛の人を亡くしながらも、
何とか日常を取り戻し始めていた。そして、物語は始まる。
雨の降る日曜日、二人はいつもの森の散歩の途中、
幽霊となって記憶をなくした「澪」と出会う。
夫と妻と子供、3人の愛が織り成す感動の物語。


<感想>
とてもいい小説です。
お父さんを「たっくん」と呼ぶ佑司、プーとノンブル先生、
森の奥でのボルト拾い…。物語の設定や小道具が、
すべて物語の雰囲気作りに役立っていて、独特の世界を作り上げています。
小説というより御伽噺に近いかもしれません。
小説を面白いと感じる条件として、
主人公を好きになれるかどうかってかなり重要だと思う。
めちゃくちゃカッコいい主人公が出てくる小説も僕は勿論好きです。
でも、この小説の「巧」のように弱くてダメな主人公も大好きです。
泣ける小説の条件は、主人公のダメっぷりをいかにうまく書くかでしょう。
僕は「たっくん」のことがとても大好きになりました。


19人目  貴志祐介


『青の炎』(角川文庫) ★★★★★☆☆☆☆☆


<貴志祐介さん>
日本屈指のホラー作家さんですが、昨年4年半ぶりに上梓された『硝子のハンマー』では
本格ミステリ(密室トリック)に挑戦し、有栖川有栖さん等から大絶賛されました。
今後の作品にかなり期待が寄せられています。
1997年に『黒い家』が第4回ホラー小説大賞を受賞し、100万部を超える
大ベストセラーになりました。


<あらすじ>
『青の炎』 高校二年生の櫛森秀一は母と妹との3人暮らし。
その生活に割り込み、平和な家庭を壊そうとする男、曾根。
彼は母が10年まえに再婚し、すぐに別れた男だった。
傍若無人に振舞う曾根を殺し、家族の幸せを取り戻そうと決意する秀一。
完全犯罪に挑む少年の孤独な戦い。
秀一の哀切な心象描写が光る、倒叙形式の推理小説。


<感想>
家族を守るために完全犯罪に挑む秀一。人を二人も殺しているのに、
読者はきっと秀一のことを応援することになります
後半、警察によって追い詰められる場面はドキドキものです。
とにかく最後まで捕まらないでほしいと願い続けていました。
心理描写がとても丁寧にされていて、秀一の不安感、焦燥感、孤独感などが、
手に取るように読者に伝わります。これは映画ではなかなか表現できない部分なので、
この作品は映画よりも小説で読んだ方がいいかもしれません。
心理描写はうまいんですが、人物描写はとてもいい加減な印象を受けました。
ミステリでも、この手の作品はしっかり人が書けていなければダメでしょう。
「本格ミステリ」であれば、人が書けていなくても、なんら問題はありませんが。
ところで、この小説は「倒叙形式」をとったミステリ?です。
倒叙形式というのは、最初から犯人がわかっていて、それを警察や探偵が
追い詰めていく形のものです。「古畑任三郎」がその例です。
僕はこの形式はあまり好きではないです。なぜなら、最初から犯人も犯罪の経緯も
わかっているため、驚きがないからです。
稀にとんでもないどんでん返しを食らわせてくれる「倒叙ミステリ」もありますが…。
なので、この手の小説は、犯人の心理描写を楽しみたいという人にはオススメ
できるかもしれません。


<そのほかの作品>
『ISORA―13番目の人格―』(角川ホラー文庫)   ★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『黒い家』(角川ホラー文庫)          ★★★★★★☆☆☆☆
『クリムゾンの迷宮』(角川ホラー文庫)     ★★★★★★★☆☆☆


20人目  京極夏彦


『姑獲鳥の夏』(講談社文庫) ★★★★★★★★★☆


<京極夏彦さん>
ジャンル分け不能。そんな小説を書く作家さん。
キーワードは「妖怪」「薀蓄」「ミステリ」「怪談」などでしょうか。
1994年に『姑獲鳥の夏』(第0回メフィスト賞受賞作)でデビュー。
新本格ミステリのパラダイム自体を変えてしまったと言われる程、
衝撃のデビューでした。
本格ミステリ界では、「綾辻以降」という言葉がありますが、
そのうち1994年以降を「京極以降」と呼ぶようになるかもしれません。
受賞歴は、日本推理作家協会賞、泉鏡花賞、山本周五郎賞、直木賞など。


<あらすじ>
『姑獲鳥の夏』 古本屋にして陰陽師の京極堂が憑物を落とし事件を解決する
「京極堂シリーズ」第1弾。東京・雑司ヶ谷の医院に20ヶ月も身籠ったままの
娘がいるとの奇怪な噂が流れる。そして、その夫は密室から失踪したという。
文士・関口、探偵・榎木津らの手には負えず、京極堂が事件解決のため重い腰を上げる。
戦後最大級のミステリ作家?京極夏彦の超絶デビュー作


<感想>
本を読んでいて気を失いそうになったのはこの本がはじめてでした
これほど小説の世界に入り込んでしまうことなんて、今までに経験がなく、
この時は息をするのも忘れて読みふけった覚えがあります。
独特な世界観に加え、謎の提示の仕方、その解決の仕方が上手い。
緻密な論理の構築と斬新性。もうほんとに「凄すぎる」としか言いようがありません
特に後半部分は一気読み必至。鳥肌たちまくりでした。
「母様」の衝撃は忘れられません。
後半は読み終わるのが残念で仕方なかったです。読み終わって1時間ぐらいは、
興奮していたのか、小説の世界から抜け出せていなかったのか、
意識が朦朧としていました。夢うつつ…。
こんな読書体験ができたことは一生の思い出です。


<そのほかの作品>
『魍魎の匣』(講談社文庫)  ★★★★★★★☆☆☆
『狂骨の夢』(講談社文庫)  ★★★★★★☆☆☆☆
『鉄鼠の檻』(講談社文庫)  ★★★★★★★☆☆☆